「契約の自由」を侵害するNHKの「割増金徴収」 次はネットでも受信料?

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GHQはNHKを衰退させる計画だった

 ただし、NHK地方局は、規模を縮小させ、運営は受信料ではなく、広告、寄付で賄うとしていた。アメリカ各地には教育団体や宗教団体が運営する公共目的の放送局があるが、それらはこの方式で運営されている。

 このように計画していたので、彼らはNHKが受信料を徴収して、それまでのように直営地方局を結ぶ全国的放送ネットワークを保持し、それを結ぶ放送インフラを維持、整備、拡張していくことに反対した。

 実は、彼らはこのような放送インフラ、つまりマイクロ波リレー網は、拙著『日本テレビとCIA』にも詳しく書いたように、讀賣新聞社主の正力松太郎に作らせ、電電公社と共同使用させようと考えていた。

 そして、戦前・戦中軍部の走狗となっていたNHKはラジオ放送のみにして、テレビ放送への参入を許さず、日本テレビ放送網など民放にだけ許して、NHKを衰退させ、日本をアメリカのような民放王国にしようと考えていた。

 だが、占領の終わりとともに、民間通信局はこの計画を遂行できなくなった。占領軍が去った52年、GHQの束縛から解き放たれた吉田茂総理は、NHKにテレビ放送免許を与えた。

 こののち、NHKは受信料を使ってテレビ放送のための自前のマイクロ波リレー網を建設し、まず、東京、名古屋、大阪を結び、そののち、全国にあまねく広く放送が届くよう人口過疎の離島や山間部にまで広めた。

今日のメディアの現状を無視

 64年に出された臨時放送関係法制調査会の答申において、「受信料は、NHKの維持運営のため、法律によってNHKに徴収権の認められた、『受信料』という名の特殊な負担金と考えるべきである」としたが、この場合のNHKの維持運営とは、衛星放送が始まる前の、放送インフラによってコンテンツを届ける全国的放送ネットワークとしてのNHKの維持運営という意味だろう。

 2017年12月6日の最高裁の受信料判決でも、前出の網島が述べた受信料徴収の根拠を引用して、受信契約義務を合憲と判断している。つまり、放送インフラを維持するための「特別な負担金」なので、合憲だとしたのだ。

 放送を受信せず、通信インフラによって配信を視聴するユーザーには、この放送インフラを整備維持するための「特別な負担金」を払ういわれがない。どうしても払わせるというなら最高裁判決が邪魔になる。もともと、この判決は、地上波の放送インフラによらずとも、衛星放送によって、あるいは通信回線を使ったインターネットによって、あまねく全国にコンテンツを届けられるようになっている今日のメディアの現状を無視したものだった。

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