「契約の自由」を侵害するNHKの「割増金徴収」 次はネットでも受信料?

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「値下げ」という言葉のうそ

 そもそもこの値下げは、NHKとか総務省が胸を張れるものなのか。NHKは特殊法人であり、利潤追求のための企業ではない。株式会社なら黒字を出せば、それを出資者に配当しなければならないが、特殊法人は、それをしないのだから、黒字が出たのなら収支バランスがゼロになるよう料金を下げなければならない。

 NHKが徴収した受信料の総額がコンテンツ制作部門と送出部門の運営のための経費を上回って剰余金が出るなら、値下げするのは当然のこと。なにも放送法を改正するまでもなく、NHKが自発的にすべきことだ。

 ところが、放送法を読んでわかるように、受信料に関わることは、総務大臣の認可を得ることになっている。つまり、NHKが受信料を取り過ぎて、剰余金が生じたときは、豪壮な放送センターを建て替えたり、受信者も怒り出すような高給を従業員に払ったりすることに使うのではなく、値下げに回すという当然のことをするのに、国会に諮ったうえで、総務大臣の認可を得る必要がある。そこで、今回の法改正となったわけだ。

 したがって、この改正法を提出した国会議員が、受信料の値下げに道を開いたと胸を張るとすれば、それはとんでもない勘違いというものだ。むしろ、もっと前にすべきだったことを、今まで放置してきたと非難されるべきなのだ。だから「値下げ」という言葉にだまされてはいけない。

イギリスでも許可料が問題に

 現在、世界中で、とくに若者の間で、公共放送どころか、テレビ放送そのものが見られなくなっている。つまり、放送から動画配信へのシフトが進行中だ。これは前から起こっていたことだが、コロナ禍によって加速した。世界中の人々は放送コンテンツよりも、YouTubeやアマゾン・プライム、Netflixのような動画配信コンテンツを多く見るようになっている。

 放送は、時間が来るまで待たなければならず、録画しない限りは、早送りも巻き戻しもできず、好きなところで止めて、あとでそこから見直すということもできない。若者がよくやる倍速視聴もできない。操作性がないのだ。

 動画配信ではこれらのことが自由にできる。しかも、放送なら、シリーズものは週1回で、次を見るまでに1週間待たなければならないが、動画配信は待たずに、集中的に見ることができる。映画やドキュメンタリーやコメディーなどバラエティーも豊かだ。したがって、動画配信も1社ではなく、複数社と契約する人が増えている。

 人々は動画配信を見るようになった分だけ、放送を見なくなっている。コンテンツ視聴に割ける時間が限られているのだから当然だ。これは日本の総務省の情報通信白書でも、イギリスの情報通信庁(Ofcom)のデータでも明らかだ。そして、複数の動画配信サービスを利用するようになり、公共放送にお金を払いたくないと強く思うようになっている。だから、イギリスなどでも許可料が問題となっているのだ。

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