既存の刑事ドラマへの挑戦?ドラマ「初恋の悪魔」の楽しみ方
見どころは「自宅捜査会議」
その推理の際、鹿浜がほかの3人に与えた指示があまりにバカバカしく、笑えた。
「事件の本質を捉えるためには現実世界を最適化する必要がある。つまり、3つ目の目を持つんだ」(鹿浜)
「分かりました! 分かりませんけど、分かりました!」(馬淵)
そりゃあ分かんないわ、フツウ。けれど馬淵は異様なまでに素直なので、鹿浜に従う。額に手を当て、3番目の目をつくろうとした。釣られて小鳥と摘木も額に手を当てた。マヌケな光景だった。
それでも4人は最終的に転落死の真実を突き止める。やはり少年の自死。もっとも動機が違った。医師の不公平な診療により、好意を寄せていた病院内の少女の命が奪われたため、少年は抗議の意味で死を選んだ。切ない結末だった。
4人のお陰で真実は闇に葬られずに済んだ。となると、「警察署内のアウトサイダー4人が正義を実現する物語」のようだが、実際にはぜんぜん違う。
4人の目的は犯人逮捕ではない。社会を良くしたい訳でもない。真実の解明によって目指すものは「自己満足」(小鳥)。そういう理由で仕事をする人は少なくないから、リアルだ。また、正義感をバッサリと切り落とした警察ドラマやミステリーは存在しなかったので、新しい。
既存の刑事ドラマへの挑戦か
そもそも、この作品は既存の刑事ドラマへの挑戦でもあるのではないか。4人のルールは「被害者に同情しない、加害者を裁かない」(摘木)。既存の刑事ドラマは被害者に思いっきり肩入れする。一方、加害者は取調室や崖の上で厳しく断罪する。4人とは正反対なのである。
密度の濃い作品だ。まず馬淵は、優秀な刑事だった兄・朝陽(毎熊克哉、35)の殉職との関係を署長・雪松(伊藤英明、46)に疑われている。馬淵は兄殺しの犯人を見つけないと、自分の無実を証明できない。
鹿浜は摘木に恋をした。初恋だ。鹿浜は馬淵に対し「僕はおかしいのかもしれない…」と打ち明けた。鹿浜は最初から全面的におかしいのだが、それには気づいていない。鈍い。おめでたい。
小鳥もやはり恋をしている。ラブストーリーかつ青春群像劇と謳う作品らしい。相手は刑事課のマジメな新人刑事・服部渚(佐久間由衣、27)。この4人が転落死事件を調べ始めたきっかけも小鳥が服部に手柄を立てさせたかったからだ。
[2/3ページ]