尹錫悦の「従中」に怒り出した米国 「合同演習」に続く踏み絵は「半導体同盟」
「イエレン頼み」は空振り
――結局、イエレン訪韓時にスワップは与えられたのでしょうか。
鈴置:与えられませんでした。米国は日本のように甘い国ではありません。依然として「従中」を続ける韓国に命綱を投げる――スワップを与えたりはしないでしょう。
もしスワップを付ければ、韓国は「この程度の従中は許される」と米国を舐め、ますます中国の顔色を見るようになるのは確実です。
2011年10月、日本の民主党政権がスワップを結んだら、韓国は途端に掌を返しました。李明博(イ・ミョンバク)大統領が竹島に上陸するは、「日王は謝罪しろ」と罵倒するは……。日本に対しやりたい放題になりました(図表「通貨スワップを仇で返した韓国」参照)。
なお、韓国の企画財政部はイエレン長官が秋慶鎬(チュ・ギョンホ)副首相兼企画財政部長官と7月19日に会談した際、「韓米両国が必要な時に流動性を供給する装置など、多様な協力方法を実行する余力があるとの認識をともにした」と発表しました。
これをもとに一部の韓国紙は「スワップに含み」と書きましたが、米財務省からはスワップを匂わす発表は一切ありませんでした。
「chip4」が新たな踏み絵
――イエレン財務長官への期待は空振り……。
鈴置:イエレン長官はスワップを与えるどころか、韓国に対し「製品の供給網」でも米国側に立つよう求めました。尹錫悦大統領との会談に関する発表資料で触れています。「供給網の回復力の重要さで一致」という表現を使っています。
・Secretary Yellen and President Yoon also underscored the importance of bolstering supply chain resiliency to protect against costly disruptions that lead to higher prices and adversely impact American and Korean workers, consumers, and businesses.
これだけでは何のことか分かりにくいのですが米国は今、日本、台湾、韓国を巻き込んで半導体同盟「chip4(チップ4)」作りに乗り出しています。
米国は半導体の設計と製造装置に圧倒的な強みを持ちます。台湾はロジック半導体、韓国はメモリーの生産能力と技術が図抜けている。日本は半導体製造用の素材が得意。
この4カ国が協力関係を密にすることで「安定的な半導体・同素材の供給網を作る」のが目的です。が、それはもちろん建前。本音は半導体産業でも台頭が著しい中国への技術移転に歯止めをかけ、成長を阻止することです。
米国は「chip4」に参加するかどうかを8月末までに決めるよう求めており、日台は参加することを決める一方、韓国政府は判断を下しかねています。
毎日経済新聞の「韓国、米主導の半導体同盟参加検討へ 悩み深まるサムスン・SKハイニックス」(7月20日、日本語版)など、韓国各紙が報じました。
韓国の半導体産業にとって、中国は最大の市場であると同時に重要な生産拠点。中国政府との関係が悪化し、報復されるのを恐れているのです。
中国外交部報道官は7月19日の会見で「当事者が公正な立場で自身の長期的な利益を考えるよう望む」と述べ、韓国などの「chip4」参加を強く牽制しています。
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