「札幌地裁ヤジ判決」が安倍元首相の射殺を招いたのか 朝日新聞も読売新聞も言及
社説は配慮!?
原告勝訴を報じた3月26日の朝日新聞の記事(註)でも、取材に応じた京都大学の毛利透教授(憲法学)が同じように「かなり踏み込んだ判断といえる」と指摘した。
ところが、「踏み込んだ判断」という評価に噛みついたのが、当の朝日新聞だった。名物コラム「天声人語」は、判決を報じた26日の自社紙面を踏まえ、27日に以下のように批判したのだ。
《原告が憲法判断を求め、裁判所が正面から向き合った。当然のように思えるが、紙面にある識者談話によると「かなり踏み込んだ判断」だったらしい》
行間から「踏み込んだ判断という分析はおかしい。当然の判決と位置づけるべきだ」というニュアンスが伝わってくる。
朝日新聞のスクープ記事が、司法によってお墨付きをもらった格好になった。紙面で“自画自賛”したくなる気持ちも分からないではないが、社説では堅実な記述にとどめた。
「朝日新聞が社説『裁かれた道警 許されぬ憲法の軽視』を掲載したのは、天声人語より遅い29日のことでした。北海道警を全面的に批判しましたが、安倍元首相に対する言及は《安倍首相(当時)》という1箇所だけで、配慮したことが伺えます」(同・記者)
読売が社説で反論!?
だが、安倍元首相が射殺されると、「札幌地裁の判決や、判決を必要以上に支持した朝日新聞の紙面が警察を萎縮させ、安倍元首相が凶弾に倒れる一因となった」との指摘が相次いだ。Twitterの投稿から一部をご紹介しよう。
《朝日自身、この社説の妥当性を検証し、奈良県警への影響をきちんと解説すべきである》
《朝日らの所為で札幌地裁判事「(註:原文は実名)」が「警察は演説妨害者の排除をするな」という愚かな判決を出す土壌が作り出された。それにより警備が甘くなり悲劇に繋がった》
《当時の安倍晋三首相の北海道でのヤジ排除を違法とした札幌地裁も、それを擁護するかのような報道も、間違っていたって事だ》
読売新聞も7月9日の社説「安倍元首相銃撃 卑劣な凶行に怒り禁じ得ない」で、この問題を取り上げた。ただし、判決についての言及は最小限に抑えられた。
《2019年の参院選では、首相だった安倍氏にヤジを飛ばした男女が北海道警の警察官に排除された。だが、札幌地裁はこの警備が違法だったとして、今年3月、道に損害賠償を命じている》
《要人警護のあり方に検討の余地はあるにしても、容疑者がやすやすと至近距離まで近づいて発砲するまで、何の措置も取らなかったことなど、対応に不備があったのは明らかだ。政府は警備体制の問題点を検証し、発表すべきだ》
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