米国はロシアとの「新冷戦」に勝てるか 深刻な状況を浮彫りにするシカゴ大「報告書」

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米国で内戦のリスク

 政府への不信が進む中でも国民の信頼を保ってきた司法にも強烈な逆風が吹き始めている。連邦最高裁判所が6月24日、中絶の権利を認めない判断を下したからだ。人工妊娠中絶を憲法上の権利と認めた判例を覆した連邦最高裁判所について、米国民の約6割が否定的な見方を抱いていることがロイターの調査でわかっている。

 最高裁判所の判断が米国全土に「社会的緊張」を引き起こしており、米国民の政府への不信感は決定的なレベルに達してしまう可能性は排除できない。

「米国の分裂状態はベトナム戦争時代より深刻だ」との危惧が強まる中、カリフォルニア大学政治学部のバーバラ・ウォルター教授は「米国で内戦のリスクが高まっている」と警告を発している。今年1月に『内戦はこうやって始まる』を上梓したウォルター氏は、過去30年間に起きた内戦を様々な指標で分析した結果、「アノクラシー」が最も重要な指標であることに気づいたという。

 アノクラシーとは「その国がどのくらい民主的か、どのくらい独裁的か」を測る指標のことだ。民主主義が後退している国の人々は政府に対し強烈な不満を抱くのがその理由だ。ウオルター氏の主張を裏付ける世論調査も出てきている。

 シカゴ大学が6月30日に公表した報告書によれば、過半数の米国民が「政府は腐敗しており、自分のような一般人に不利になるような政策を仕組んでいる」と回答しており、「それほど先ではない時点で市民が政府に対して武装蜂起する必要が出てくると思うか」という問いにイエスと回答した比率は28%に達したという。

「米国で内戦が発生する」かどうかは定かではないが、国内の深刻な分断状況を改善しない限り、ロシアとの新冷戦に勝利することはできないのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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