太陽系の外には何がある!? NASAの最新望遠鏡が見つけ出す「宇宙の新常識」

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 7月11日、アメリカのNASA(米航空宇宙局)が公開した、「これまでで最も遠い、鮮明な宇宙の赤外線画像」。

「約46億年前の銀河団〈SMACS0723〉の姿」とする、この美しい画像を撮影したのは、ハッブル宇宙望遠鏡に代わる次世代の「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)」である。

 では、この望遠鏡は一体いかなるものなのか――『太陽系の謎を解く――惑星たちの新しい履歴書』(新潮選書)をもとに、宇宙研究の最前線を見てみよう(以下、引用は同書より)。

 新しい宇宙望遠鏡によって何がわかるのか。何を知ろうとしているのか。

 目標は壮大だ。

「地球外生命が存在するかどうかについて、新たな知見をもたらしてくれそうなのが2018年4月18日に打ち上げられたTESS(トランジット系外惑星探索衛星)と、2021年12月25日に打ち上げられたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)。いずれもNASAのミッションだ。

 TESSは、これまで系外惑星探査で中心的役割を果たしたケプラー宇宙望遠鏡の後継機である。ケプラーは“狭く遠く”が得意(3000光年以内で、全天の0.25%をカバー)だったが、新たに送りこまれるTESSは“広く近く”で力を発揮する(300光年以内で、全天の85%をカバー)。TESSでハビタブルゾーンにある惑星に当たりを付け、ジェイムズ・ウェッブでその惑星の大気の成分などを詳細に調べて生命存在の可能性を探るのだ

 2022年4月現在、TESSは稼働中だが、ジェイムズ・ウェッブは主鏡の調整作業中で、両者の本格的な連係がはじまるのは今年の夏頃からとされている。」(ハビタブルゾーン:生存可能領域)

 つまり、稼働直後に捉えた画像が、今回の銀河団の姿ということとなる。

 しかし、ここでも示されているように、JWSTは、ただ遠くをきれいに撮影するだけの望遠鏡ではない。TESSで幅広く宇宙を探査した結果、「気になる星」が見つかると、このJWSTで、より詳しく調べるのだ。

 その目標に挙げられるのが、系外惑星に存在するかもしれない地球外生命の調査であり、さらにその向こう、宇宙誕生の解析だという。

「系外惑星」と聞いてピンとこない方もいらっしゃるかもしれないが、その名の通り、太陽系の外にある惑星のことである。

 これまで太陽系内の惑星、衛星については、1977年のボイジャー打ち上げ以降、さまざまな探査衛星によって明らかにされてきたが、1990年投入のハッブル宇宙望遠鏡、2009年投入のケプラー宇宙望遠鏡によって、さらに遠くの世界まで見通せるようになった。とくにケプラー望遠鏡は系外惑星の探査に抜群の成果を残した。そして今回、さっそく成果を見せた新たな宇宙望遠鏡はケプラーの性能をはるかにしのぐ。

太陽系の常識を覆した〈熱い木星〉の発見

 系外惑星の研究は、今、宇宙研究の最大の関心事であり、アメリカNASAも、当初予算の16億ドルをはるかに上回る約100億ドルを投入してJWSTを開発した。

 この「系外惑星」は、500年以上前から研究者たちが存在を指摘しつつ、実際に発見されたのはごく最近のことだ。

「太陽系の外にある惑星、いわゆる系外惑星の存在は、すでに16世紀のころからずっと指摘されてきた。ニュートンもまた、その可能性を唱えた一人だったが、当時の観測技術で確認することは到底かなわず、発見は20世紀の終わりまで待たなければならなかった。

 系外惑星が初めて確認されたのは1992年とされる。しかし、これは後に崩壊した巨大ガス惑星の核の残骸などであると指摘され、決定打とはならなかった。決定打となった発見はさらに3年後、1995年10月のことだ。スイスの天文学者、ミシェル・マイヨールとディディエ・ケローが、太陽から約50光年離れた恒星、ペガスス座51番星のまわりで公転する惑星を、ついに検出したのだ。それは木星よりやや小さい巨大なガス惑星だった。

 はじめて確認された太陽系の外の、自ら光を発しない天体。系外惑星発見のニュースは世界中の人びとを驚かせ、2019年に二人の天文学者はノーベル物理学賞を受賞している。

 だが、発見がもたらした驚きは、ただ『発見した』というだけにはとどまらなかった。天文学者たちを本当に驚かせたのは、この巨大ガス惑星の公転周期と、そのあと続々と見つかる新たな系外惑星たちの奇妙な姿だった。

 よく知られているように木星の公転周期は約12年である。これに対して新たに見つかった系外惑星の公転周期は、同じような巨大ガス惑星であるにもかかわらず、わずか4日だった。この短い周期は一体何を意味しているのだろうか。

 いままで木星のようなガス惑星は、恒星の近くでは誕生しないとされてきた。なぜなら恒星に近ければ、ガスはあっという間に蒸発してしまうからだ。それなのに新たに見つかったガス惑星は、太陽系で最も太陽に近い水星の公転周期88日よりも、ずっと短い。つまり新たに見つかった系外惑星は恒星に密接しているのだ。そうなると、これまでの学説が崩れてしまう。

 しかも、最初の発見で系外惑星の検出方法が確立されると、同様の系外惑星が次々と見つけられるようになり、それらの中には恒星の自転と逆方向に公転するものもあることが分かってきた。太陽系の惑星がもれなく太陽の自転と同じ方向に公転していることを考えれば、まさに常識を覆す、さらなる驚きであった(2022年5月現在、5022個の系外惑星が確認されている)。

 天文学史に残る大発見がもたらした、まったく新しい知見。天文学者たちは、恒星近くを公転する巨大ガス惑星を『ホットジュピター(熱い木星)』と呼び、新たな学説の構築に挑み始めた。そして導き出されたシナリオのひとつが、『惑星は動く(公転軌道を変える)』というものであった。恒星から遠く離れたところで誕生し、その後、巨大な力を受けて恒星の近くに移動するというものである」

 30年ほど前にようやく確認できた系外惑星は、発見されて早々、従来の天文学の常識に疑問を投げかけ、いまや、「地球外生命」の存在まで示唆するまでになっている。

 宇宙誕生から2億年後の光を観測できるともいわれるJWSTは、はたして今後どれだけの発見を人類にもたらしてくれるのだろうか。

『太陽系の謎を解く――惑星たちの新しい履歴書』より一部を抜粋して構成。

デイリー新潮編集部

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