倒れた「アイドル」20人以上… 出演者が語るお台場「アイドル博」のお粗末すぎる実態
猛暑により連日、熱中症の注意を呼び掛けるニュースが相次いでいるが、7月17日に開催されたイベント「TOKYOアイドル博」では、多くのアイドルたちが熱中症で倒れ、11台もの救急車が出動する事態となった。ネット上では主催への批判が集まり大炎上ともなったが、その舞台裏を取材した。【徳重龍徳】
会場となったのは、東京・台場にある大型の駐車場。ここにステージが設けられ、イベントは16~18日の3日間にわたり開催された。開催前の報道によると参加グループ数は340組以上。会場のステージには屋根はなく、17日当日はアスファルトの照り返しも強い中でアイドルたちはパフォーマンスを行っていた。熱中症で倒れたアイドルは10歳から25歳の計11人と報じられたが、関係者を取材すると、実際に倒れたアイドルは20人以上いたという。
メンバーの一人が緊急搬送されたアイドルグループのマネージャーは、次のように話す。
「メンバーはライブ後に体調不良を訴えました。楽屋に下げたのですが、楽屋にいる間に体調が悪くなり、バックヤードに設けられた医務室に連れて行きました。すると既に数人の子が熱中症で倒れており、その後に救急車が呼ばれました」
しかし、新型コロナウイルス第7波で医療体制が逼迫しているため、このアイドルグループのメンバーが病院に搬送されたのは、救急車を呼んでからおよそ3時間後だった。会場には通常の救急車以外に、「スーパーアンビュランス」と呼ばれる大規模災害や多数傷病者発生時等に出動する特殊車両も駆けつけ、救急搬送先が見つからないアイドルはこの車両内で治療を受けていたという。
「知って防ごう熱中症」の著書がある、横浜国立大学の田中英登教授(環境生理学)によれば、17日当日は熱中症の危険性が高い環境だったという。
「まず、当時の最高気温が29.8度、最小湿度が74%ですから、体感気温では33~34度。34度くらいの環境での負荷が身体にかかると考えていいでしょう。猛暑日ほどではありませんが、熱中症にかかりやすい状況だったとはいえます。また、日射によってアスファルトに熱がこもりやすく、雨で一時的に冷やされたとしても、その後、1時間もすれば乾燥し、下からの熱を感じるようになったと推察します」
前述のアイドルグループの担当者も「午前中に降った雨が乾いて、余計に湿度が高くなった面もあると思います」と話す。
サウナと化していた楽屋…アイドルの証言
さらにSNSではアイドル博に参加したアイドルたち自身が、テントの中に設けられた楽屋がサウナ風呂と化していたと明かしている。17日に「アイドル博」に出演していた地底リバイバルアイドルサークル「平成墓嵐」の夕月未終さんは、楽屋の様子について教えてくれた。
「着替えもできるよう締め切られたテントひとつに対して、大きな扇風機がひとつずつ置かれていました。使用時間などは決まっていなくて、常に3組くらいのグループさんが入れ替わり立ち替わりで使っていました。前日の雨で地面は水溜まりもあるくらい濡れており、地面に座る、しゃがむこともできない中で、椅子は8脚くらいしかなかったのも疲労が溜まる原因だったと思います。テントなので日差しは免れましたが、暑さと人の密集、一瞬降った雨のせいで湿度も高く、風通しも悪く空気が薄いような暑苦しさはありました」
別のアイドルBさんも同様の証言をしてくれた。Bさんは暑さに耐えきれず、会場から歩いて10分ほどの距離がある商業施設「ダイバーシティ東京」に逃げ込んだという。
さらに楽屋には“格差”があった。バックヤードには複数の大型バスが停車しており“バス楽屋”として、ここを楽屋代わりに使用することができたのだが、そのためにはアイドル一人あたり3000円を主催者に払う必要があった。バス以外にも自分たちで用意した車を楽屋代わりにするグループもいたが、車を用意できなかったアイドルたちは、サウナと化したテント楽屋を使わざるを得なくなった。熱中症になったアイドルの多くは、このテント楽屋を使っていたアイドルだという。
そもそも楽屋で使用料を取ること自体、「アイドルを5年やっているが聞いたことがない」とBさんはいう。
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