「羽生結弦」現役引退で浮上 中国が狙う“氷上王子”コーチ招聘計画の現実味
「フィギュア覇権」の起爆剤
習近平・総書記(国家主席)は北京五輪招致時、ウィンタースポーツの競技人口を「3億人に増やす」ことを“公約”として掲げ、中国を「ウィンタースポーツ大国」に押し上げる大号令を掛けた。
「そのため中国では馴染みの薄かった冬季五輪競技を強化するため、欧米から一流どころをコーチとして呼び集めましたが、羽生氏ほど人気と実力を兼ね備えた人物の招聘に成功した例はありません」(田代氏)
そのインパクトは「日本シンクロの母」と呼ばれ、中国では「教母」と語られる井村雅代氏ですら及ばないという。井村氏は78年に日本代表コーチに就任以降、アーティスティックスイミング(シンクロナイズドスイミング)が正式種目になった84年のロサンゼルス五輪から6大会連続で日本にメダルをもたらした。
06年に中国代表のヘッドコーチに就任すると、08年の北京大会、12年のロンドン大会で中国にメダルをもたらし、現在のロシアと並ぶ強豪国に育て上げた人物だ。
「世界最高のリンク」を提供
「コロナ禍と経済停滞で庶民の不満が鬱積するなか、招聘に成功すれば、習氏の総書記としての“3期目続投が見えてくる”との声も聞かれるほど、国中を熱狂させる大手柄になる。中国は羽生氏を呼び寄せることを“国家100年の計”の文脈内で捉えていると考えたほうがいいでしょう」(田代氏)
いまのところ、羽生が中国側のオファーを受けるとは現実問題として考えにくいが、果たして今後、羽生の心が少しでも動く可能性はあるのか。
「フィギュアの場合、トップクラスの一握りの選手らは国籍を問わず、横の繋がりが非常に強い。そのため中国側が直接、羽生氏にコンタクトを取る方法はいくらでもあり、実際、様々なタイミングで彼に打診を試みると思います。その際、羽生氏が仮に日本代表のコーチや指導者に就く場合とは桁違いの待遇を提示するのは間違いありません。羽生氏の望む、理想的な世界最高のリンクを新たにつくることだって厭わないはずです」(田代氏)
世界で最も優れたトップリーダーを搔き集める――、中国の「千人計画」はスポーツ分野でも加速しているようだ。