藤井聡太が棋聖3連覇で五冠維持 “楽しそうな感想戦”で永瀬王座に見せた特別な笑顔

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20代は「非常に大事な時期」

 コロナ禍になって報道陣は主催社しか対局室に入れなくなったが(入れるのは指し始めと終了後だけ)、それ以前は筆者も間近で藤井の感想戦を見ていた。その頃、藤井への取材は今以上に過熱していた。

 当時、日本将棋連盟の関西本部の広報担当者は「感想戦では絶対にマイクを突き出さないでください。専門的な将棋のことしか話しません。『今日の昼めしうまかったなあ』なんていう話は絶対しませんから」などと懸命にマスコミの交通整理をしていたものだ。

 棋聖戦は1局1日制の五番勝負だが、現在のスピード化時代にあって、名人戦や王位戦などは七番勝負で、しかも1局2日制だ。「持ち時間を短縮してもいいのでは」などと思ってしまうが、長時間の思考を重視するのは「将棋の中身を高めていく」という意味があるのだという。

 感想戦も「技術向上」の1つ。プロとて、お互い相手の意図や戦略を勘違いしたままで終わっていることもあろう。「ああ、なるほど」が繰り返される中、確認されるのだ。AI(人工知能)への依存度が高まっても、これが「人間同士」の戦いたる将棋の技術向上の伝統でもある。

 藤井は今後、現在防衛戦を闘っている王位戦などでタイトルを守り切った上、本戦を勝ち進んでいる棋王戦で渡辺二冠への挑戦者となれば、「六冠」を目指せるが、それは来年2月以降の楽しみということになる。

 記者に20代になったことについて問われると「実力を高めるために今後の数年というのは非常に大事な時期と思うので」と語った。藤井の10代が終わってしまうのが、なんだか寂しい。

(一部敬称略)

粟野仁雄(あわの・まさお)
ジャーナリスト。1956年、兵庫県生まれ。大阪大学文学部を卒業。2001年まで共同通信記者。著書に「サハリンに残されて」(三一書房)、「警察の犯罪――鹿児島県警・志布志事件」(ワック)、「検察に、殺される」(ベスト新書)、「ルポ 原発難民」(潮出版社)、「アスベスト禍」(集英社新書)など。

デイリー新潮編集部

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