まるで他人事? 旧統一教会系の新聞「世界日報」は安倍元首相の射殺事件をどう報じたか
嘘の説明を垂れ流し
どれくらい他人事のような記述なのか、そして、「今は違う」と自己正当化しているのか、記事から具体的に引用してみよう。
《関係者によると、山上容疑者は奈良市内の一戸建て住宅で母親や兄、妹らと同居していた。母親が入信した頃、山上容疑者は高校生で、母親はまもなくして自宅を売却し、02年に破産宣告を受けていた。時期的に多額の献金が原因だった可能性がある》
《統一教会は1980年代以降、高額な印鑑などを売りつける「霊感商法」や、見知らぬ人同士による「合同結婚式」を巡るトラブルが社会問題になった。2009年には霊感商法で逮捕者が出て、当時の会長が辞任している》
《田中会長は「09年以降はコンプライアンスの徹底を進めている。母親が破綻した後に高額な献金を要求したことはない」と話した》
まるで、09年に当時の会長が辞任したため今の組織に非はない、とでも言いたいような記述になっている。
また事件の翌日にあたる9日、世界日報は1面に「『日本取り戻す』遺志引き継ごう」の記事を掲載した。
藤橋進・特別編集委員の署名記事だが、文中に、
《志半ばで安倍氏は凶弾に倒れた。その空白を埋めることは容易ではないが、その遺志を引き継ぐものが、その空白を埋め志を実現していかねばならない》
とある。この一文に、“信者の息子が放った凶弾で、安倍元首相は死亡した”という観点は完全に欠落している。
逃げ続ける紙面
旧統一教会は説明責任を果たさないだけでなく、虚偽説明も目立つと多くのメディアが報じている。念のため確認しておこう。
毎日新聞は15日の朝刊に、「安倍元首相銃撃:旧統一教会 献金強要相談、今も 弁護団、教団説明に『うそ』」の記事を掲載した。
《弁護士連絡会には全国の元信者らから今も同連合に献金を迫られたなどとする被害相談が寄せられており、21年は47件(総額3億3153万円)に及ぶという》
《元信者の女性が献金の返還を求めた訴訟では20年2月、東京地裁が「献金の要求は、不安や恐怖をあおる不当な方法だった」として勧誘した同連合側に約470万円の返還を命じる判決を下し、同連合などの上告が棄却され21年に確定している》
旧統一教会が、組織防衛のため虚偽説明を行い、それを世界日報が垂れ流すようにして紙面を作ったことがよく分かる。
その後も世界日報は、事件と教団の関わりを無視するかのような紙面を作り続ける。再び「宗教団体」の文字が見出しに使われるのは、14日の「宗教団体トップ襲撃計画 3年前 容疑者供述 約20年前から恨み募らす」だ。
記事の本文は山上容疑者の襲撃計画を報じているのだが、相変わらず他人事のような記述が目立つ。
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