まるで他人事? 旧統一教会系の新聞「世界日報」は安倍元首相の射殺事件をどう報じたか

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 山上徹也容疑者(41)が安倍晋三元首相(享年67)を射殺したのは、7月8日の午前11時半ごろだった。新聞やテレビは、いち早く「特定の宗教団体に恨みがあった」との供述内容を報じた。

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 事件の起きた8日には共同通信が「特定の宗教団体」に言及した記事(註1)を配信し、翌9日にはNHK、朝日新聞、読売新聞なども報じた(註2〜4)。

 出版社が運営するネットメディアなどは、早くから「旧統一教会(世界平和統一家庭連合)」と宗教団体名を報じていた。だが、いわゆる“大手メディア”は、不自然なほど言及を避け続けた。

 状況が一転したのは11日。旧統一教会の田中富弘会長が東京都内で記者会見を開いてからだ。この日の速報を境として、全国紙などは「旧統一教会」と団体名を明記するようになった。

 こうした大手メディアの報道姿勢と歩調を完全に合わせたのが、日刊紙「世界日報」だ。

 旧統一教会が発行している新聞として知られ、《統一教会系の新聞「世界日報」》(東京新聞電子版)、《旧統一教会の機関誌である「世界日報」》(スポニチAnnex)などと報じられることが多い。担当記者が言う。

「山上容疑者が安倍元首相を殺害したのは、逆恨みであることは言うまでもありません。その上で、容疑者の母親が旧統一教会に巨額の献金を行っていたことで家庭が崩壊したという事実は、犯行の動機を解明するためには極めて重要でしょう。ところが世界日報は、そのような視点で報道をしていないのです」

他人事のような記事

 全国紙が一斉に「旧統一教会」と明記した12日の朝刊でも、世界日報の記事の見出しは、依然として「宗教団体」と明言を避けている。

「この日、同紙の社会面には、山上容疑者が犯行前日、旧統一教会の施設で自作した銃の試射を行ったという記事が大きく掲載されました。ところが見出しは『宗教団体施設近く弾痕か』と、団体名を伏せたのです。記事の本文でようやく《世界平和統一家庭連合(旧統一教会)》と言及しました」(同・記者)

 念のため、朝日新聞と産経新聞の見出しを紹介しておこう。世界日報と同じ12日の朝刊に掲載されたものだ。

◆旧統一教会施設に銃撃か 弾痕?確認 安倍氏殺害前日(朝日)

◆安倍元首相銃撃 「試し撃ち」供述 ビルを現場検証 旧統一教会施設入居(産経)

 世界日報の紙面では、「宗教団体施設近く弾痕か」の記事下に、「『安倍氏 会員や顧問ではない』 旧統一教会会長 容疑者母から献金」という記事が掲載されている。

「田中富広会長の会見を伝えた記事ですが、まるで他人事のような記述に違和感を覚えました。やろうと思えば、他のメディアが追随できないほど深い取材ができるでしょう。しかし、実際の紙面は正反対でした。表面をなぞっただけの浅い記事が目立っただけでなく、『トラブルになったのは昔のことです』と言わんばかりの記述さえありました。まして謝罪の言葉など、どこにも書かれていません」(同・記者)

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