「美人霊能者の勧誘から9千万円を献金」 統一教会で人生が変わった普通の人たちの話
“有名知人”を探せ
看護学校の生徒だった元信者のC子さん(26)は合同結婚式を目指す苛酷な「献身」生活をこう証言する。
「'88年9月からワゴン車に乗って珍味売りをしました。カスリのモンペにTシャツを着、その上に派手なエプロン姿、朝5時に起きて6時半頃から夜10時頃まで普通の家庭を回ります。夜11時~午前2時頃迄はバーやスナックを回ります。毎日3時間位しか寝れないので眠くて仕方ない。眠らないように一つの家から別の家へ移動する時は走るんです。月に休日は1日、小遣いは1万5千円でした。“朝ドサ”という売り方もあります。わざと食事、洗顔抜きで訪問販売をして、“顔を洗わせてくれ”“食事を取らせてくれ”“トイレを貸してくれ”などといって上がり込むんです。アベル(上司)に従うことは文師、すなわち神の言うことですから絶対に従う訳です。年末には、恵まれない子に愛の手をとか、チェルノブイリ救済といった名目で募金活動をしました。伝道では“有名知人”を探せ、と言われました。有名人が来ることで多くの人が集まり、それによって地上天国の実現が近づく、という説明でした」
資産家を狙え
この時期、すでに霊感商法という言葉は有名になっていたが、それ以外に浮上していたのが「クレジット献金」というものだった。信者が資産家に接近して、持っている不動産を担保に借金させて、献金をさせるというシステムである。祖父の土地を勝手に売り払って献金したという山上徹也容疑者の母親の行動を連想する方もいることだろう。
被害を受けたという東京近郊に住むトラック運転手(56)の話。
「5年前の秋、50歳位の見知らぬ女性が訪ねて来て、霊界のことを盛んに話すんです。適当に聞き流していたが、そのうち“素晴らしい霊能者がいるから見てもらったほうがいい”と言う。そうしたら“清姫”という30歳前後の顔だちもスタイルも素晴らしい美女の霊能者が来た。わたしは独り者だったが、清姫はわたしが結婚できないのは先祖の因縁のせいだと言う。で、先祖代々の家屋敷を担保に金を作り、その金を世のため人のために捧げれば救われる、と言うんです」
その後、毎日のように入れ代わり立ち代わり20人近くの人が訪ねて来て、「清姫の言うことを信じなさい」と説得する。が、統一教会の名前は一度も出さなかったという。
「統一教会と知ったのは、その翌年になってから。最後に、一流都銀を定年退職した元銀行マンという人が来て“わたしも自分の土地を現金にして、統一教会に貸して1年後に返してもらったから大丈夫”と勧める。こんな立派な人が言うなら、とわたしも決心したんです」
結局、家屋敷を担保にクレジット会社から9千万円を借金。手続は、すべて統一教会側の人間が行った。
「ところが、返済期日の1年後に問い合わせると、待ってくれという。その後も延長、延長で、下手に逆らっても返ってこなくなると思って我慢していたら、昨年11月、クレジット会社から“返済金滞納で、このままだと担保を処分しなければいけない”と電話が来たんです」
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このように人生が教団によって狂ってしまったと感じている人は少なくない。もちろん、その恨みをぶつける相手はあくまでも教団であるべきで、今回の事件の山上容疑者のように安倍元総理を復讐の対象として選ぶことは、まったくの筋違いなのは言うまでもないだろう。
一方で、この凶行によって教団は過去の悪業が注目を浴び、大きなダメージを受ける事態となっているのも事実。山上容疑者はここまで先を読んでいたのだろうか。
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