“大谷しか勝たん”で暴騰する二刀流 ソト超え「100億」巨額年俸の現実味

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サイ・ヤング賞候補に名乗り

 米大リーグ、エンゼルスの大谷翔平(28)が前半戦だけで昨季のメジャー自己最多に並ぶ9勝(4敗)を挙げた。1918年のベーブ・ルース以来、104年ぶりの「10勝、10本塁打」はもはや時間の問題。今季は投手での進化が顕著で、オールスター戦直前はチームが大谷登板時しか勝てないほどの圧倒的な存在感を示した。FAになる2023年オフの大型契約に向け、MLBの代理人たちの間で定着しつつあった「大谷は基本、打者。プラスアルファで投手もできる」との評価はここに来て一変した。

 大谷は球宴前最後の登板となった7月13日のアストロズ戦、野茂英雄に並ぶ4試合連続の2桁奪三振をマークし、勝ち投手になった。最近はチームの連敗を止めることが多く、絶対的なエースになっている。

 MLBで活動するベテラン代理人は今季序盤、大谷のプレーヤーとしての青写真をこう描いていた。

「我々は大谷をベースはバッターとしてみている。体に負担が大きい先発投手は、今の二刀流の形態であと何年できるか分からない。最終的にはバッター専念になると思う。ただ、移行するまでにリリーフはやるかもしれない。100マイル以上投げられる投手はメジャーでも稀。レギュラーのクローザーは難しくても、連投中のクローザーを休ませる日に最後を締めるために登板することなどは、あり得ると思う。そうだとしても基本はバッターであることに変わりはない」

 イチローも大谷に投手より打者としての潜在能力の高さを認めていた。ところが、6戦6勝とした6、7月で「見方が変わってきた」と言う。

「試合を支配する投球が続いている。現段階でどの球団でもエースになれる。しかもまだまだ成長する余地があり、ポテンシャルは底知れない」
 
 米記録サイトのベースボールリファレンスによると、チームの勝利への貢献度を示す指標「WAR」は7月14日現在の投手部門で、リーグトップのマクラナハン(レイズ)の3.7に次ぐ2位の3.2。11勝のバーランダー(アストロズ)の2.6を上回る。一躍、サイ・ヤング賞候補に名乗りを上げた。

「このレベルを維持すれば、間違いなく(記者投票である同賞で)得票はある。投打で評価されるMVPとは違って投手だけの評価となるが、ひょっとするとひょっとするかもしれない」(MLB記者)

 日本人投手では過去、2020年のダルビッシュ有(パドレス)や前田健太(ツインズ)らの2位が最高。大谷が受賞すれば日本人初、しかも二刀流という前代未聞の快挙となる。

「目標ノート」達成に驚きの声

 打者としては昨季、ホームラン王を争うなど46本塁打と日本人離れしたパワーを見せつけた。今季は投手としても超一流の仲間入りを果たそうとしている。若手時代から取材する記者からは、改めて大谷の計画性と実行力に驚きの声が聞こえる。

 大谷が高校2年、17歳の時に年齢ごとの目標をノートに書き出していた逸話は有名だ。「27歳でのMVP」は昨季、予定通り達成した。

 投手としての目標は、21歳でローテーション入りして16勝。翌年、22歳でサイ・ヤング賞とある。24歳では25勝とノーヒットノーランの達成……。かつて大谷が自身をベースは投手であることを認めているように、他に「25歳で世界最速175キロ」などとMVPより先に投手での目標がずらりと並んでいた。

 確かに大谷の野球人生は、まず投手で脚光を浴びた。岩手・花巻東高時代には球速160キロで度肝を抜いた。日本ハム入団後も投手優位の成績が続いた。しかし、メジャー1年目の2018年に右肘を故障し、オフにはトミー・ジョン手術を受けて2019年を棒に振った。昨季復活を果たしたとはいえ、打撃が「主」、投球が「従」の成績だった。

 しかし、今季は逆になっている。

「マウンドでの躍動感を見ても今季の二刀流の方が本来の大谷のイメージに近い。目標ノートから年齢的には遅れたが、16勝以上とサイ・ヤング賞受賞を同時に達成してしまうかもしれない」(元日ハム担当記者)

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