“イチローを超えかけた男”根鈴雄次が明かす、“ラオウ”杉本裕太郎を本塁打王に導いた「逆転の発想」

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理想は大谷翔平のバッティング

 昨季、30歳にして大ブレークを果たし、オリックスの25年ぶりとなるリーグ優勝を支えた、「ラオウ」こと、杉本裕太郎。それまでのプロ5年間の本塁打は通算9本だったにもかかわらず、昨季は32本を放って本塁打王に輝いた。そんな“遅咲きの男”に、メジャーでスタンダードとなった「縦振り」のスイングを教え込んだのが根鈴雄次氏だ。イチロー氏よりも先に「日本人初の野手メジャーリーガー」になりかけた根鈴氏は、どのようにして「ラオウ」を覚醒させたのか。(今回は、前編に続いて後編をお送りする)【喜瀬雅則/スポーツライター】

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 その“イチローを超えかけた男”が、理想の形に挙げた「大谷翔平」のバッティングを横浜市都筑区で開講する「根鈴道場」で、まずその動きを解説した。そこには、ラオウ開眼の神髄も、含まれているのだ。

「去年、ホームランを左中間に打ってるでしょ? これ、バットはこう入るしかない」

 バットのヘッドを、ストンと下に落とす。これ以外に、当たらない。日本のレベルスイングだと、ボールの軌道にバットが入りようがないのだ【写真1】。

「大谷翔平も、その後ろを打つマイク・トラウトも、明らかにバットを横に振ろうとはしていない。だから、大谷が大きな空振りをしたとき、日本の解説者は『アッパースイングですね』と言いながら終わっちゃうけど、本人はアッパースイングのイメージはないはずなんです。バットを縦に入れて、当たらなかったから、ブワーンとすごいことになっちゃっているだけで、あれでボールが当たれば、どこでも入っちゃうわけですよ」

 それを根鈴は「壁当て」と表現する。

「ボールを投げて、壁に当てる。あの時、壁に角度がついていたら、勝手にバーン、ボーンとボールが上がる。その感覚です」

 つまり、投球の軌道に対して、そのままバットを縦に入れていく。そこでコンタクトできれば、バット自体に角度がついているから、勝手に上がっていくというのだ。

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