若者とおじさん、分かり合えない問題 「ハズレを引きたくない世代」は何を考えているのか

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「面白いところだけ見たい」

 また、ゲーム実況動画などもネタバレ必至のコンテンツだろう。ゲーム実況動画が好きだという20代前半の男性が話す。

「たしかにネタバレですけど、面白ければ気にならないですね。気になっていたゲームとかは、どれくらい面白いのかとかわかるし。ただ、長々と見ると時間がもったいないので、面白いところだけ見たい。なので、コメント欄を参考にしてスキップしながら見たりします」

 もはや、“ネタバレの合わせ技一本”状態である。先の展開がわかってしまうだけでなく、いいところだけつまみ食いしたい――。

「おじさんの時代はね、ストーリーの展開をバラした分だけ、友だちが減ってしまう時代だったんだよ」

 そんなことを彼に伝えようと思ったが、年寄りの力自慢になりかねないので口をつぐんだ。

 令和の時代は、ネタバレそのものがコンテンツ化する時代なのだろう。事実、ゲーム実況動画の影響によって、ゲームがより売れる(DLされる)ことは珍しくなく、ルールを設けた上でゲーム実況動画を推奨するメーカーは少なくない。思えば、『天空の城ラピュタ』の“バルス祭り”は、ネタバレコンテンツの先駆けだったのかもしれない。

スキマ時間争奪戦

 こうしたネタバレ消費の背景には、情報や商品があふれかえるからこそ、いち早くパーソナライズしたいという思いがある。コストパフォーマンスならぬ、タイムパフォーマンスという言葉が、ここ最近プレゼンスを高めているが、いかにして最短距離で自分の好きなものとマッチングできるか――は、世代関係なく、現代人にとって看過できない関心事だ。

 ありとあらゆるものが、手のひらの中で行えるスキマ時間争奪戦の最中に生きる我々は、タイムパフォーマンス効率化の手段として、必ずしもネタバレ=悪とは考えないようになってきている。とは言え、まさか、「サプライズなんかいらない」という言葉を耳にするとは思わなかったけれど。

 先述した指輪の話を、同世代の男性編集者に話したところ、「もしかしたら怒られることもサプライズに見えているのかな……」と漏らし始めた。どういうことか?

「若手の編集者はどうしても、まだ仕事に慣れない。ですから、最初は大目に見て、あまりとやかく言わないようにしているんですよ。でも、何度もミスをすると、さすがに上司として怒らないといけない」

 あるとき、彼は「ダメだろ」と強めに叱責したという。すると、若手はきょとんとした顔を浮かべたそうだ。

「怒られている顔じゃないんですよ。なんだろう、びっくりしているというか。でも、我妻さんの話を聞いて腑に落ちました。僕が怒ったことがサプライズに映ったんだろうなぁ。『いつもは怒らないのに、なんで突然怒るんだ』って顔だった。それもサプライズに映っちゃうのか……なんでこんなにイレギュラーなことに対して敏感なんでしょうね」

 老害扱いされても言ったほうがいいことがある――。そうわかっているつもりだけど、彼は頭を抱え、次の言葉を探してしまったという。

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