日本ハムの“未来”が中日より圧倒的に明るい理由

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期待された野手の底上げは……

 一方の中日を見てみると、開幕当初は石川昂弥やルーキーの鵜飼航丞を抜擢するなど、チームに変化は感じられた。だが、結局、レギュラーとして出場している選手は昨年から大きく変わっていない。先日は今年初のトレードにも踏み切るも、オリックスから獲得したのは、守備や走塁に定評のある後藤駿太で、課題である打線のテコ入れとなるとは考えづらい。

 ドラフトでは石川以前にも、堂上直倫や高橋周平、根尾昂と、その年の“野手の目玉”と言える選手を獲得しているが、レギュラーに定着しているは高橋のみ。その高橋も思い描いていたような強打者とは程遠い状況にある。

 野手陣の底上げを期待された立浪監督、そして中村紀洋打撃コーチ(5月23日付で一軍から二軍に配置転換)の指導による効果は出ているとは言い難いようだが……。地元テレビ局スポーツ担当記者は、中日の現状をどう見ているのか。

「ドラフトでは素材の良い選手は獲得しているのですが、生え抜きの強打者がとにかく育っていません。特に、高校から入団した選手で完全にクリーンアップに定着したのは、(落合中日の黄金期を支えた)森野将彦が最後で、それ以降はとにかく小粒な打線になっています。立浪監督、中村コーチに対する期待も大きかったですが、2人とも高校から入団して早くからレギュラーになったいわゆる“天才タイプ”の人で、その感覚に合わない選手も多いと聞きます」

来年には明暗がはっきりと

 さらに、アマチュア選手に中日への入団を避けたいという動きもあるという。前出の担当記者が続ける。

「ルーキーでも1年目に結果が出ないと、いきなり年俸がダウンする年俸査定に対する疑問の声が多く、アマチュアの選手、特に野手からは中日はできれば避けたいという声もあるそうです。外国人の補強も消極的で、トレードも機能しているとは言えません。監督というよりも、球団全体の問題が大きいのではというのが地元でのもっぱらの評判ですね」

 後藤を獲得する交換要員として、オリックスに移籍した石岡諒太が、いきなり一軍で活躍しているというのも皮肉な話である。中日は本拠地がナゴヤドームに移転した時には星野仙一監督(当時)の号令で一気にチームを作り替え、開場3年目の1999年にはリーグ優勝を飾っているが、現在はそのような空気は全く感じられない。来年には、日本ハムとの明暗がはっきり分かれていることも十分考えられそうだ。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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