安倍元首相銃撃事件 元公安警察官が指摘「爆発物探知犬を使うべきだった」
日本の公安警察は、アメリカのCIA(中央情報局)やFBI(連邦捜査局)のように華々しくドラマや映画に登場することもなく、その諜報活動は一般にはほとんど知られていない。警視庁に入庁以後、公安畑を十数年歩き、数年前に退職。昨年9月に『警視庁公安部外事課』(光文社)を出版した勝丸円覚氏に、VIPをテロリストから守る「爆発物探知犬」について聞いた。
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【写真3枚】背後が“死角“だった現場……なぜ山上容疑者の襲撃を許したのか
7月8日、奈良・近鉄大和西大寺駅前で凶弾に倒れた安倍晋三元首相。勝丸氏は、「間違いなく防げた事件だった」と指摘する。同氏は、海外の日本大使館に警護担当として赴任した経験もある。
「安倍さんの警護には、大きなミスが2つありました。1つは、警視庁のSPが安倍さんから1メートル以内にいなかったことです。1発目の銃声が聞こえた時、SPは安倍さんにタックルして倒し、弾が当たらないように体に覆い被さるべきでした」
もう1つは、安倍元首相の後ろを見ている警護担当者が一人もいなかったことだという。
「安倍元首相の後ろは車道でした。車道を渡って接近してくる男に気づかなかったというのは致命的ミスです」
四方がガラ空き
さらに勝丸氏は、警備計画そのものが間違っていたと指摘する。
「演説していた場所は、四方がガラ空きなんです。これでは、どこからでも狙われてしまうので非常に警備しづらい。駅舎などの大きな建物を背とか、選挙カーを背に演説すべきでした。或いは、安倍元首相の後ろの車道を全面交通規制するなどして対処すべきでした。もっとも、なんで車を止めるんだと非難される可能性もありますが……」
山上徹也容疑者(41)は、手製の銃で凶行に及んだ。
「オープンスペースでは、金属探知機で手製の銃を探知するのは難しい。ならば、爆発物探知犬を使うべきでした」
爆発物探知犬とは、日本ではあまり馴染みがない気もするが。
「空港などに配置される麻薬探知犬はよく知られています。同じ探知犬でも爆発物探知犬もいます。東京都や大阪府、神奈川県、千葉県、埼玉県、愛知県など、政令指定都市のある都道府県の警察にいます。欧米では、民間の爆発物探知犬が数多く活躍しています」
具体的にどのようなケースで配置されるのか。
「天皇陛下、首相、外国の要人が来られる会場などで爆発物探知犬が使われています。要人到着の数時間前に会場内と周辺の探査を行います」
とはいえ、山上容疑者が使用したのは手製の銃である。爆弾ではない。
「山下容疑者の手製の銃は、撃った瞬間白い煙が上がりました。かなりの火薬を使ったと見られます。風下に探知犬がいたなら、火薬のつめこまれた銃はすぐに発見されたでしょう。間違いなく事件を未然に防げたと思います」
爆発物探知犬は、海外ではVIPが参加する催しやコンサートホール、劇場、スポーツ施設など、多くの人が集まる場所に配置されるという。
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