黒人差別、ナチスと闘ったスプリンター 伝説となったライバルとの五輪決勝(小林信也)
ジェシー・オーエンスは1936年ベルリン五輪の陸上で4冠に輝いた英雄。だが、「黒人スプリンターの生涯は不遇で、馬と競走させられたこともあった」と、子どもの頃に聞かされた。
ジェシーは本名ではない。小学校の先生が通称のJCを聞き間違えて呼んだのが定着したという。名前を間違われるのは愉快じゃない。私はしばしば信也を「しんや」と読まれる。そのたび、少し傷つく。しかしジェシーには相手の誤りを正す人権意識すら持たされていなかった。呼ばれるまま受け入れることが、当時の黒人少年の置かれた現実だったのだろう。...