感染爆発のコロナ“第7波” BA.5は「ワクチンが効かない」「肺で増殖しやすい」は本当か?
累計感染者数が1000万人を突破し、爆発的な感染拡大を見せているコロナ“第7波”。全国の新規感染者は10万人を超え、過去最高の感染者数を更新する自治体も日に日に増える“異常事態”へと突入している。と同時に、コロナと共生して3度目の夏を迎えるにあたり、専門家からは「正しく恐れることの重要性」が指摘されている。
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4日連続で新規感染者数が1万人を突破した東京都では、いまの感染スピードが続けば「2週間後に5万3000人を超える」と、都のモニタリング会議が予測。かつてない“感染爆発”に見舞われている。
感染が急拡大する要因のひとつが、“第6波”を引き起こしたオミクロン株の亜系統「BA.1」と比べ、感染力が約1.4倍強いとされる新系統「BA.5」への置き換わりだ。
今回の急速な置き換わりを招いた背景について、東京歯科大学市川総合病院(呼吸器内科部長)の寺嶋毅教授はこう話す。
「6月1日以降、1日あたりの入国者の上限が2万人に倍増し、感染リスクの低い国や地域からの旅行客の検査が免除。この水際対策の緩和に伴い、BA.5流行国からの訪日者などによって新系統が国内に持ち込まれたと見られています。国内でも同時期に感染対策が緩和され、さらにワクチン接種の伸び悩みも感染拡大を後押ししたと考えられます」
4回目接種の予防効果は60~45%
ワクチンの3回目接種率は65歳以上の高齢者で90%を超えるが、20代は46.4%(7月11日時点)、30代で50.1%(同)。4回目接種率となると現状、高齢者でも3割を超える程度にとどまる。
「高齢者の3回目接種の時期は今年1月から2月が多く、6月以降のワクチン効果が薄れる時期とBA.5流行のタイミングが重なった。2回目、3回目とも接種後5カ月以上経つと感染予防効果が20%未満になることが報告されています」(寺嶋氏)
米コロンビア大学などの研究では、BA.5は3月以降に流行したBA. 2に比べ、感染を防ぐ中和抗体の効果が4分の1以下に減少。ワクチン接種などで獲得した、感染を防ぐ免疫の「回避能力」が高いとされる。
「誤解のないよう補足しますと、ワクチン接種によって重症化を防ぐ効果を否定する研究データはありません。感染予防効果についても、4回目接種による感染予防の上乗せ効果が3回目より小さくなることは事実ですが、ゼロになるわけではない。イスラエルやイギリスが公表したデータによれば、1回目と2回目の感染予防効果が90%を超えるのに対し、3回目はピーク時で70~80%。4回目はピーク時で約60%、平均すると45%程度の効果へと減じますが、ワクチンの有効性は担保されています」(寺嶋氏)
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