「立民惨敗」でも「泉代表」責任論なし 党内から怨嗟の声も「このままじゃ社民党と同じ運命をたどる」
「選挙結果がどうであれ辞めない」
確かに泉代表を辞めさせることには党内に慎重論も根強い。ある若手議員はこう擁護する。
「泉さんは代表になって1年も経っていないし、参院選が厳しい結果になることは見えていた。執行部の態勢強化は必要だけれども、代表の責任論になるのは不思議だ。ここで交代しろと言うなら、選んだ側の責任も問われるべきだ」
また、ベテラン議員の一人は「有力な次の代表候補がいないし、しばらく選挙もない。そんな中で代表を無理に変えるのは得策ではない」と語る。
そして、当の泉代表本人に辞任する考えがない。参院選の前から周辺に「選挙結果がどうであれ辞めない。代表が頻繁に変わる事の方が恥ずかしいという文化が育って欲しい」と話していた。そして選挙後の幹部会では「今回の結果を重く受け止めながら、党の立て直しを図っていきたい」と続投する考えを示した。周辺には「もっと最悪な選挙結果も想定していた。野党第一党も引き続き確保できたし、厳しいけど次に向かってはプラスに考えていかないといけない」と前向きに語っている。
うごめき始めた「泉おろし」
しかし、活力が低下している党内でも、不満の声は出始めている。地元岩手選挙区で30年ぶりに議席を失った小沢一郎元民主党代表。昨年の代表選では泉代表を支持したが、水面下で泉降ろしの動きを進めているのだ。小沢氏に近い議員は「今、党内で小沢氏が一番、泉代表を変えないとだめだと思っている」と話す。
また今回、東京選挙区で4回目の当選を果たした蓮舫前代表代行。前回選挙は112万票あまりを獲得してトップ当選だったが、今回は67万票で6人中4番目。党運営に対する危機感は極めて強い。選挙翌日Twitterに「猛省と、再生のためのリスタートが必要」と書き込んだ。
今後、立憲は来月のお盆前をメドに参院選の総括をまとめ、両院議員総会に報告する方針だ。そうした場で泉代表ら執行部の責任論が出てくるのは避けられないだろう。そこで鍵を握るのが西村智奈美幹事長の去就だ。幹事長が引責辞任を表明すれば泉代表に飛び火する可能性もあるし、後任の幹事長になり手がいない事態もありうる。ある中堅議員は語る。
「選挙結果は明らかに惨敗。もし代表を続けたとしても、党はまとまらずいつでも分裂含みになる。結局、身を引かざるを得ないよ」
党のトップを変えれば、立憲が抱える問題が解消するわけではない。しかし、泉代表が続投するのならば、党の再生と与党に対抗していくための新たなビジョンを示し、次に向かう推進力を取り戻さねばならない。そうでなければ求心力が低下し、八方ふさがりの状態に追い込まれるだろう。秋の臨時国会以降は経済・金融政策のあり方や憲法改正など、国論を二分しかねない大きな課題が待ち受ける。岸田政権の行いをチェックすべき立憲民主党のかじ取りを誰が務めるのか、日本政治の流れに少なからず影響を与えることになる。
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