日本の経済はなぜ「40年間一人負け」なのか 平均年収は韓国以下に

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能力開発が個人に任されている現状

 能力開発も、かつてはOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)などの形で、企業内で進める余裕がありましたが、経済の低迷が長引き、労働内容が多様化するなか、企業にはそうした教育を行う余裕がなくなっています。

 ですから、能力開発は個人が自主努力で行うほかないのが現実です。それを大規模に支援する際に重要なのは、自己投資にかかる費用を、税額控除など税制面で優遇したり教育費を削減したりする措置です。たとえば、返済不要の奨学金を大幅に拡充する。ハーバード大学など海外の有名大学で学ぶためには、高い学費が障壁になりますが、優秀で高い意欲をもつ若者には、それを国が援助する。こうして学びやすい環境を整えるのです。

 非正規雇用者の支援も大切でしょう。ただ、それは貧困対策に近いもので、日本経済をどん底から這い上がらせ、成長軌道に乗せるための対策とは異なると考えたほうがいいです。

技術マッピングが必要

 岸田総理はなにをしているのでしょうか。日本経済の凋落は、バブルの前のプラザ合意や半導体協定から始まっており、そこから数えれば、もう40年になります。また、日本人の賃金が上がらなくなって30年です。総理にとって最大かつ喫緊の課題は、日本経済の凋落を食い止め、復活に向けた軌道に乗せることに尽きるはずです。

 事実、日本経済が成長して競争力を取り戻せば、賃金や所得は上向き、岸田総理が重要性を力説している分配問題も、小手先の策を弄さずとも解決します。

 岸田総理は「人の話をよく聞くこと」を、自身の長所としておられますが、この「新しい資本主義」の計画案も、各官庁の担当者たちに話を投げ、集まった回答を無秩序に並べただけのように見えます。

「デジタルを活用した地方活性化」「マイナンバーカードと運転免許証の一体化」「サプライチェーン強靭化」「最先端技術の官民研究開発支援」「人的資本など非財務情報の開示を強化」等々。思いつきの政策を、七夕飾りの短冊のようにぶら下げただけなので、私は「七夕資本主義」と呼ぶのです。

 本当はしっかりと道筋を定めて、有機的な連関のなかに個々の政策を位置付け、相乗効果を生むようにすることが必要です。1980年代にアメリカが日本を追い抜こうとしたとき、政府、軍、民間企業が一体となって技術マッピングをし、投資を誘導しました。

 このように技術をマッピングし、お金を誘導するという視点が「新しい資本主義」にはありません。それぞれの「短冊」に論理的な連関がないのです。

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