日本の経済はなぜ「40年間一人負け」なのか 平均年収は韓国以下に
1人当たりGDPは19位まで降下
しかし、それからもうすぐ40年。世界の2割近くを占めていたGDPのシェアは約6%に落ち、アメリカと世界トップ争いをしていた1人当たりGDPも、19位にまで落ち込んでいます。そして日本人の所得は、韓国にも追い抜かされてしまいました。
40年前の日本の産業は、自動車はトヨタを筆頭に世界をリードし、半導体産業も80年代半ばには、世界シェアの半分を占めていました。銀行も11行が、資産規模でみた世界30位内にランクインしていました。ところが、いまは半導体のシェアは10%ほどで、銀行は見る影もなく、なんとか世界に伍しているのはトヨタ自動車くらいです。
つまり日本経済の現状は、幕末や終戦時に次ぐどん底に近づいています。焼け野原だった終戦時と変わらないほど壊滅的です。まずは国家のリーダーたる総理大臣が、そのことを強く認識し、国民にしっかりと説明しなければなりません。しかるのちに思い切った戦略を立て、強いリーダーシップを発揮しながら、決死の覚悟で日本経済を再生させる必要があります。
ところが、岸田総理は危機意識を少しも見せません。参院選で勝利すれば、衆院を解散しないかぎり自民党は3年間安泰です。その間に日本経済を抜本的に立て直す覚悟が問われているのに、岸田総理にはそれがみじんも感じられません。
明確な戦略が見えない
事実、岸田総理が打ち出した「新しい資本主義」には、いろいろな政策項目が並んでいますが、基本的な戦略が見えません。私はこれを「七夕資本主義」と呼んでいますが、その理由は追って説明しましょう。
そもそも資本主義とは18世紀後半以降、産業革命に伴いイギリスで発展したものです。当初、経営者は放任されていたので、利益を追求するために労働者を徹底的に搾取しました。これに疑義を唱えたのがマルクスで、そうした問題点に鑑みて1910年代に流行したのが修正資本主義でした。資本主義に社会福祉や労働基準法のような発想を取り入れ、労働者を一定程度保護しようとしたのです。
しばらく時代は下って70年代以降、レーガン米大統領やサッチャー英首相が代名詞とされるネオリベラリズム(新自由主義)が現れます。そこでは金融をはじめ多くの分野で規制緩和を行い、市場の自由競争を促そうとし、たしかに経済成長は進みましたが、所得格差や貧困の拡大、環境問題など、さまざまな弊害も生じました。
岸田総理はこうした弊害を是正するとして「新しい資本主義」を唱えています。そこでは、格差や貧困を解消するための分配政策が強調され、デジタル化やグリーン化、経済安全保障政策などが掲げられています。
バイデン米大統領はこれを聞き、「私の選挙公約かと思った」と言いました。たしかに、分配の不平等が際立つアメリカで行うなら適切かもしれません。しかし、欧米にくらべれば分配が平等な日本には、もっと重要な目標があるはずです。なにより総理の明確な考え方や戦略が見えません。
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