中日“謎トレード”に地元も冷ややか 立浪監督とフロントの微妙な関係が露呈

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「打撃は必ず何とかします」と言った手前……

 しかし、今回のトレードに関してはフロント主導で行ったものだが、立浪新監督の影響も少なからずあったと見られているようだ。

「昨年、立浪監督が就任した時に『打撃は必ず何とかします』と言ってしまった手前、もっと打てる選手を連れてきてほしいとは言いづらいのではないでしょうか。シーズン途中に打撃コーチが入れ替わっても、今のところ効果は出ていません。そんな中で思い切ったトレードにも踏み切りづらいという状況があるようです。また、(立浪監督が就任する前の)昨年のドラフト会議で、大学生の外野手3人を指名したことも、立浪監督は想定外だったと話しており、フロントと現場の意思疎通が上手くいっていない印象が強いです。本来であれば、もっとフロント主導で補強をすべきなのでしょうが、チーム再建の“切り札”として招聘しただけに、監督の顔色をうかがいながらの動きになったのが、今回の不可解なトレードに繋がったようです」(前出の記者)

課題解消の狙いから大きくずれている

 古い話にはなるが、星野仙一監督の第1次政権時代の1987年には三冠王に輝いた落合博満を4対1の大型トレードで獲得。巨人に獲得されることを防ぐためという意味合いが強かったとは言われているものの、落合はその後、主砲として十分な働きを見せて、1988年のリーグ優勝に大きく貢献している。

 また、第2次星野政権の1998年では、狭いナゴヤ球場から広いナゴヤドームに本拠地が変わったことを受けて、スピードと守備を重視する野球のために、関川浩一と久慈照嘉を阪神から獲得し、翌年の優勝に繋げている。

 当時のトレードと比べると、今回を含めて直近3件の外野手獲得は、チームの課題解消に対する狙いからは大きくずれていると言わざるを得ないだろう。

 将来の主砲として期待された石川昂弥は、怪我で長期離脱となり、根尾昂も投手へ転向した状況で、どのようにしてチームを立て直していくのか。中日フロント陣、そして立浪監督の苦しい戦いは、まだまだ続くことになりそうだ。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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