安倍元首相を暗殺した山上容疑者が恨み骨髄だった「旧統一教会」 家族が信者になったことで「本当に家族がバラバラになりそうになった人」の話(その2)

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奪還作戦へ

 もう少し具体的に説明してもらおう。

「サポートしてくれる人たちからやり方として説明を受けたのは、戻ってきた当日にお風呂に入ってそろそろ寝ようかというタイミングで身柄を確保し、前もって借りてあるマンションに連れて行って教団側との連絡を断ち、洗脳を解くという流れだということでした。ある意味で拉致に近く後ろめたい気持ちがなかったとしたら嘘になりますが、これも洗脳を解くために必要なステップだと自分たちに強く言い聞かせていました」

 Aさんファミリーはもちろん親族などの協力を仰ぎ、決行当日に自宅前に連れ出し用のバンが横付けされる。

「当時アドバイスを受けたこととしては、そういった一時帰宅の際の奪還作戦はかなり教団内で問題視されており、とにかく気づかれないように、ということでした。だから敢えて父親は深夜まで飲みに行くなど陽動作戦を採用しました。もっとも当日かなり姉は警戒していて、教団側に頻繁に連絡を取るなど、なかなかスキを見せることはありませんでした。父親が時々、様子を見に戻ったりしてきていたことが怪しいと見られたようです。とはいえ、このタイミングを逃すとチャンスは永遠に来ないかもしれず、姉がトイレに入ったところで、“よし決行だ”ということになりました」

トイレから出ず

「当時は携帯電話が普及しておらず、姉も持っていなかったのが良い意味でポイントだったと思います。こちらの怪しい動きがバレて奪還されるかもしれないという危機を察知してか、未明になってトイレにずっと閉じこもり続けていました。両親が“いつまで入ってるの?”と言っても埒があかず、私が“とりあえず出てこようよ”と語りかけたところ、カチッと鍵が開きました。その瞬間にトイレにどっと入り込んで、まさに身柄を確保してバンに運び込んだのです」

 このために借り上げたマンションは実家からクルマでものの5分ほどの距離だが、どこに向かっているかわからないようにするため敢えて遠回りをし、かなりの時間をかけて到着したという。

「狭いマンションに10人くらいが入り込んでかなり窮屈な状況でした。姉は部屋の奥で三角座りをして黙ったままで、これはなかなか長丁場になるなと覚悟を決めたことを記憶しています」

 それが、数十日間に及ぶ奪還作戦の始まりだった。

デイリー新潮編集部

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