「スポーツベッティング」は日本に根付くか 海外でのギャンブル事情に通じた専門家が抱く違和感(競馬評論家 須田鷹雄)
日本でもスポーツベッティング(スポーツ賭博)の議論が始まっている。ただカジノ議論のときと同様、日本人は実際にそれを経験したことのない人がほとんど。イメージや雰囲気だけで「議論」が進むことに違和感もある。賛否どちらの立場も実態と離れたところで自説を唱えるばかりに見える。
【写真6枚】オリックスVSソフトバンク戦で、オリックスの勝ち2.25倍に賭けると
政治も賭けの対象
では、スポーツベッティングとはどのようなものか。世界で最も盛んなのはイギリスで、たくさんのブックメーカーがサービスを提供している。野球やサッカーなどのスポーツはもちろん、チェスや、最近ではeスポーツも対象だ。著者は実際にイギリスやオーストラリアで、贔屓のオリックス戦を中心にNPBの試合に賭けたことがある。
政治も賭けの対象になっており、例えば英大手ブックメーカー・ラドブロークス社のオッズでは2024年アメリカ大統領選挙の1番人気はロン・デサンティス(フロリダ州知事)で4倍、俳優で元プロレスラーのドゥウェイン・ジョンソンも51倍で名を連ねている。
ただ日本で政治が対象になることはないだろうから、ここでは標題でもある「スポーツ」を対象に話を進めたい。
おおまかに言ってスポーツに賭けるには2つの方向性がある。直近の試合結果や内容に賭けるものと、アンティポスト、フューチャブックというような一定以上未来の結果に賭けるものだ。野球で言えば今日の結果に賭けるか、今シーズンの日本シリーズ覇者を当てるかというようなことだ。
頻度としては直近の試合に賭けることのほうが多いが、そこにも賭け方がいくつかある。マネーラインやヘッドトゥヘッドと呼ばれるのが単純にどちらかの勝敗に賭けるもの。これが初心者には一番分かりやすいだろう。次にポピュラーなのが、点数のハンデを付けたうえで勝敗に賭けるもの。さらにどちらが何点差で勝つとか、両チーム合計で何点以上、何点以下など賭け方はさまざまある。
オーストラリアからも
単一の賭けだと倍率は2倍前後、戦力差があっても3~5倍ということが多いが、複数の試合を事前に組み合わせてより難しく高配当なセットを作ることもできる。
中長期的な賭けには先述した野球のシリーズ覇者や、もっとショートスパンなものではテニスやゴルフの大会における優勝者当てが好例だ。こちらは人気薄の選手を選んで的中すれば何十倍という配当を手にすることもできる。
本場イギリスでも日本の公営競技と同様に賭けの場は実店舗からインターネットに移りつつあるが、それでもまだ市中には実店舗がたくさんある。最近はお金を入れてタッチパネルでオッズを見ながら発券するセルフターミナルも増えた。英語が苦手な身としては、焦らずじっくり検討できるのでこちらのほうがありがたい。
筆者はオーストラリアでもよくスポーツに賭ける。オーストラリアの場合、市中店舗が許されているのはTabcorpという会社のみ(オンラインは他社もある)。詳しく説明する余裕はないがもともとは馬券を売る公社のようなものからスタートしており、専用場外馬券売り場やベッティンクターミナルを置いたバーを多数展開している。街中を歩けば「TAB」の看板がすぐ見つかるはずだ。ここでも主にセルフサービスのターミナルを使ってスポーツに賭けることができる(もちろん競馬やドッグレースにも賭けられる)。
アメリカについて筆者はあまり詳しくないし州ごとの事情がだいぶ違うが、ラスベガスのカジノではスポーツブックとレースブック(馬券売り場)がたいていセットになって営業している。スポーツ側にバーがあることが多く、たくさんの大型モニターでメジャースポーツが放映されるので飲みながら楽しむこともできる。
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