「SASUKE」が五輪種目に急浮上 絵空事ではないこれだけの理由
新たな感動の発信源
テレビ番組では、ゴールまで到達できるかが大きな目標。ゴールすればそれだけで相当な達成感を得られる。しかし、ゴール到達者があまりに少なく、ポイントが0か100かでは他種目とのバランスが悪い。途中でリタイアしてもポイントが加算できる採点方式が考慮されるだろう。加えて、ゴールに到達した場合のボーナス点や、到達者の中でタイム順に加点される仕組みになれば、「SASUKEを制する者が近代五種を制する」といった現象も起こる可能性がある。
昨夏の東京五輪ではスケートボードの選手たちが、今年の北京冬季五輪ではフリースタイルスキーの選手たちが見せてくれた感動のシーンがあった。メダルは逃しても、大舞台で勇気あるチャレンジをした選手をライバルたちが囲んで讃える光景が見る者の心を強く揺さぶった。新たに採用される種目の重要な要素は、単に勝ち負けを競うだけでなく、戦う者同士の友情や共感を呼び起こす競技性を備えていること。その意味でもSASUKEは、勝った者も敗れた者も、互いの健闘を讃え合い、認め合うスピリットが流れている。
本質的に言えば、IOCがオリンピックの都合で伝統的な競技さえ高圧的に変えてしまう状況は異常だし、容認する気持ちにはなれない。だが、オリンピックの価値観で世界のスポーツが回る現実を受け容れざるをえないのであれば、柔道や空手に続いて、というより、日本で生み出された新しい競技が正式なオリンピック種目になり、新たな感動の発信源になるのは、痛快な出来事ではないだろうか。
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