「円安」「物価高」を放置する岸田首相 「節電ポイント」で高齢者の命が危険に

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円安に手をつける気がない?

 ならば円安対策のほうはどうかというと、こちらはもはや検証するまでもなかろう。岸田政権発足時1ドル110円前後だったものが、6月21日には一時136円となり、24年ぶりの安値を記録しているのだ。

 慶応大学経済学部の小林慶一郎教授が解説する。

「円安が進み、輸入品の価格が上がって、物価高につながっている側面があります。そこにウクライナで戦争が起き、エネルギー価格高騰にも拍車を掛けました」

 このように円安と物価高はリンクしているといえるわけだが、

「先日、知人がシンガポールで『一風堂』に入ってラーメン、ビール、おつまみセットを注文したら、日本円換算だと4千円もしたそうです。異常な円安です」

 こう嘆いた上で、前出の田代氏が呆れる。

「岸田総理および日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は、円安に手をつける気がないのでしょう。黒田総裁は円安の要因となっている金融緩和をやめるつもりはないと断言している上に、国会で『金融緩和によって賃金の上昇しやすいマクロ経済環境を作り出すことが重要だ』と発言しています。そのうち賃金は上がるから、それで何とかしてくれと言っているようなもので、円安に対して何も有効な策が打てないことの責任逃れをしているに等しい」

日本だけが「最低賃金」を上げられていない

 止まる気配のない物価高に円安。奇しくも黒田総裁が言及したように賃金さえ上がっていれば、それらもさしたる問題ではなかったはずだが、今や日本の平均賃金は韓国にも抜かれる惨(みじ)めな状況だ。

 賃金問題を取材してきたノンフィクション・ライターの窪田順生(まさき)氏が分析する。

「物価が上がるのであれば、賃金も上げなければ庶民の生活が苦しくなるのは当たり前です。例えば最低賃金の引き上げ。この話をするとすぐに『左巻き』だと批判されますが、自由主義経済の本家である米国でも、ロサンゼルス市は7月1日から最低賃金を1.04ドル引き上げます。日本だけが最低賃金を上げられていないのです。政府が主導するべきなのに、岸田総理が当初謳(うた)っていた最低賃金千円の早期達成は、中小企業経営者の集まりである日商(日本商工会議所)の批判を恐れ、今回の参院選の自民党公約に盛り込まれませんでした」

 他方、経済評論家の藤巻健史氏は別の視点からこう締めくくる。

「結局のところ、GDPが上がらなければ経済のパイが増えないので給料も上がりません。しかし、日本のGDPは30年前からほとんど伸びていない。そしてGAFAのような成長企業が出てこないとGDPは上がらないわけですが、日本は未だに民ではなく官主導で、民間企業の競争力を削いでいる。岸田政権はでしゃばらないことです」

 賃金安・低価格の「安いニッポン」から、賃金安・高価格・低競争力の「弱いニッポン」へ……。

週刊新潮 2022年7月7日号掲載

特集「『物価高』『円安』『賃金安』放置プレー 『節電ポイント』で高齢者の命を危険にさらす愚策 『岸田・黒田』に『国民の生活苦』は他人事」より

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