安倍元首相が銃撃され韓国政府はノーコメント “非礼”な対応を外国人記者も批判

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 安倍晋三元首相が銃撃を受けた直後に、トランプ前米大統領は8日、ソーシャル・メディアに、「とても衝撃的なニュースだ。みんなシンゾーと家族のために祈っている」と書き込んだ。

 世界の指導者の反応が伝わる時間に、韓国大統領府と韓国外務省に、記者たちもコメントを求めた。その反応に、韓国人記者の一人は耳を疑った。

「安倍元首相の襲撃に関するメディアの報道について認知している」
「日本関係当局が事実関係を把握中であるだけに、具体的な言及は控える」

 公式のコメントを出したくないのだ。韓国人記者には、その意味はよくわかった。韓国の有力紙「中央日報」のチョン・スジン記者は、「日韓関係の地雷を踏みたくなかったのだろう」と控えめに書いた。本当は「安倍晋三という地雷を踏みたくなかった」と書きたかっただろう。

 韓国人記者と同じ時間に、英フィナンシャル・タイムズ紙のソウル支局長、クリスチャン・デービス記者も、大統領府と外務省に電話した。「コメントはない」と言われた。デービス記者は、この対応に腹が立った。

 デービス記者は、ツイッターに「韓国大統領府と外務省は、安倍元首相銃撃事件についてコメントを断った。ノーコメントだ」と書いた。こんな非礼はないし、広報の役割を果たしていないと思ったのだろう。

 チョン・スジン記者は、韓国政府のこの姿勢を批判した。隣国の元国家指導者が銃撃で死亡したのに、「ノーコメント」はないだろうと書いた。記者魂だ。韓国政府の混乱ぶりを批判したのはチョン記者だけで、韓国他紙と日本の新聞も報じなかった。

 さらに、インドネシアで開かれた主要20カ国・地域外相会議で、韓国の朴振外相が、林芳正外相に「非常に衝撃的だ、安倍元首相の快癒を祈る」と伝えた、と書いた。

韓国紙の社説

 この程度なら、大統領府と外務省も言うべきだったとの批判が、チョン記者の記事には滲み出る。なぜ、韓国政府は言えなかったのか、理由がある。韓国で、安倍元首相ほど口汚く非難される日本人はいない。「右翼」「軍国主義者」「反韓政治家」といった言葉を、新聞も平気で使う。

 韓国政府は、「安倍元首相の回復を祈る」とコメントしたら、「お前らは安倍の味方か」といった抗議が必ず来ると心配したのだ。大統領の支持率も落ちているから、躊躇した。事態がはっきりするまで、「ノーコメント」にしたのだろう。

 この空気は、左派系のハンギョレ新聞の9日の社説を見るとよくわかる。安倍元首相について「在任期間中に靖国神社を何度も参拝し、日本の植民地支配と侵略歴史に対する反省を拒否し、韓国最高裁の下した日帝強占期強制動員労働者に対する賠償判決に反発して輸出規制措置を取るなど、韓日関係が最悪の状況に陥ることに中心的な役割を果たした人物である」と書いた。

 安倍元首相についての間違いだらけの表現だが、多くの韓国人はこう信じている。しかも、死んだ人を悪し様に言わない日本の文化を、全く理解していない。日本についてのステレオタイプの誤解と無理解が、込められている。

 ハンギョレ新聞はまた、安倍元首相の死と参議院選挙を展望して「選挙後、9条改正、岸田首相の影響力が低下し、安倍元首相の遺志を維持すべしとの高市早苗氏や萩生田光一氏ら強硬派の影響力が大きくなりかねない」と、全く的外れな解説を書いた。だから、韓国の新聞は信用できない。

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