企業広告に登場し、スポーツ商業化を牽引 五輪陸上4冠王が「無名の学生だったころ」(小林信也)
「世界陸上」の歴史は案外浅い。第1回大会は1983年、フィンランドのヘルシンキで開かれた。
いまでこそ人気イベントだが、前評判は高くなかった。連日連夜、陸上の大会を熱心に見る習慣が日本にはなかったからだ。
そんな中、日本企業が大きな賭けに出た。TDKがゼッケンスポンサーを引き受けたのだ。盛り上がるかどうかもわからない世界陸上の、しかもゼッケンに企業名を入れてどれほど広告効果が得られるか? 確たる勝算は描けなかった。
84年のロス五輪は後に「スポーツが商業化した契機」と語られるが、その数年前からスポーツビジネスのうねりは始まっていた。...