「おかわり君」温室育ちの“新三振王” 空振り御免の野球人生を貫き通せた理由

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日本代表にもメジャーにも縁がないキング

 ブレーク直後の09年、そして、脂が乗り切っていた13年にはワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が開催されたが、いずれも中村が招集されることはなかった。元日本代表コーチが証言する。

「代表では4打席で3三振しても1本塁打すればいいという西武での打撃は許されない。1点を争う展開ではチャンスで長打狙いではなく、当たり損ねでも安打やゴロが求められることがある。中村の打撃は短期決戦の国際舞台では必要とされづらい。09年の人選では候補に挙がることもなかった」

 西武の球団関係者は別の理由に言及する。

「中村が大阪桐蔭高を選んだのは自宅から徒歩数分で通えることが理由だったのは有名な話。自主トレも例年、所沢の球団施設で行う。とにかく環境を大きく変えたくないタイプ。そして本人も認めるように、極度の人見知りでもある。うちでも国内フリーエージェント(FA)で他球団移籍という話は出たことがない。他に行けば、新たな人間関係を結ばないといけない。自分の打撃スタイルがそのまま首脳陣に受け入れられるかも分からない。消極的な意味で、西武から出る気はなかったと思う」

 実際、11年オフには国内FA権を取得する前に3年契約で残留した。“温室育ち”の主砲にはメジャー挑戦が取り沙汰されることもなかった。MLBで活動する代理人はこう語る。

「日本であれだけ(6度)本塁打王になっていれば普通、メジャーの話は出てくる。しかし、中村の場合は新たな環境を嫌う性格だけではなく、そもそも速球が苦手だからメジャーにフィットしない。米国に行けば投手の平均球速は上がる。飛びにくいメジャーの公式球でも飛ばす力はあっただろうが、日本よりも数が減るのは明らか。守備は一、三塁手か指名打者。メジャーではこのポジションはパワーヒッターがひしめいている。行かなかったことは賢明」

「FA権を持っているのも面倒くさい」

 中村のこれらのウイークポイントはしかし、西武にいれば表出することはない。本人もそれを自覚するからこそ、外に出ようとしなかった。2018年オフ、海外FAを行使して残留した際の言葉には、中村の立ち位置が凝縮されている。

「年も年だし、言い方は悪いが、FA権を持っているのも面倒くさい。『骨をうずめる』というのはあまり好きではないが、はたから見るとそうなる」

 西武で独自の進化を遂げ、ガラパゴス化した主砲は今季、21年目を迎えた。

「巨人や阪神のように伝統あるチームの4番なら、中村の粗がある打撃は指導者に矯正されたはず。ファンやメディアのプレッシャーも西武の比ではない。中村は西武だから本塁打王になれたし、三振王にもなれた」

 人見知りで、環境の変化に弱いくせに、自分のフィールドなら力を存分に発揮し、分かりやすいプレースタイルでファンを魅了する。本塁打王と三振王を両立した中村には、どこか昭和のにおいがする。

デイリー新潮編集部

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