「物言う株主」にかみついた東芝・社外女性役員の素顔 名古屋高裁の長官を務めた過去が

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「物言う株主」に振り回されっぱなしの東芝にとっては、頼れる「女傑」の登場だった。

 同社の株主総会が開かれたのは6月28日のこと。この日、新たに7人の取締役が選任されたが、注目されたのは社外取締役である。

 M&Aアナリストが説明する。

「新任の5人の社外取締役のうち二人は大株主である投資ファンドから送り込まれた人物です。具体的には第3位の株主であるファラロン・キャピタルから一人、そして、もう一人は第4位のエリオット・マネジメントの推薦です。これによって、取締役会13人のうち6人が投資ファンド系の人物となりました」

 かくも異様な役員構成になってしまったのは、今年3月に起きた“事件”が発端だ。

「東芝が企業価値を上げるため会社分割を発表したのは昨年11月のことでした。ところが、ファラロン・キャピタルがこれに反対し、同ファンドから送り込まれた社外取締役によってひっくり返されてしまう。その責任を取って綱川智社長、畠澤守副社長(いずれも当時の役職)が退任するのですが、これで防波堤の役目をする執行役がいなくなってしまったのです」(全国紙の経済部記者)

物言う取締役

 投資ファンドはかねて東芝の非上場化(=高値での株式買い取り)を求めており、今回、役員を送り込んできたのは、その下地作りとも見られている。だが、そこに待ったがかかる。

「総会の直前になって、投資ファンドの思惑に正面から“物言う”取締役が現れたのです」

 とは、先のM&Aアナリストである。その人物とは、昨年、社外取締役に就任した綿引万里子氏だ。

「綿引さんは、名古屋高裁の長官を務めた弁護士で、役員会では投資ファンド系の取締役を増やすことに正面から反対していました。6月6日には本人の希望で記者会見を開き、“半数近くが投資ファンドの関係者では、取締役会の多様性や公平性、バランスを欠いてしまう”と批判。さらに、自分の反対意見を株主総会招集通知に明記することも求めたのです」

 綿引氏は総会終了後に辞任を申し出ており、そうなれば投資ファンドの発言力がますます強くなることも予想される。東芝劇場の混沌(こんとん)はさらにつづきそうだ。

週刊新潮 2022年7月7日号掲載

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