70年代に“生魚のカルパッチョ”!? 朝ドラ「ちむどんどん」のイタリア料理にプロも困惑
イタリア料理考証の室井シェフも困惑
「ちむどんどん」では、物語の重要な要素としてイタリア料理がたびたび登場する。「日本イタリア料理協会」の機関誌の元編集長でもある長本氏は、当初、朝ドラの影響力に大いに期待していた。ドラマのイタリア料理考証 を担当する室井克義シェフは、日本に初めて北イタリア料理を持ってきた人物で、長本氏の知人でもあるそうだ。
「ドラマが発表された時、室井シェフと『楽しみだね』なんて話したものですよ。ドラマの内容に疑問を持ち始めてから、室井シェフが監修なのにこんな間違いをするはずがないと思い、本人に聞いてみると、『助言してはいるんだけどね……』と言っていました。『ちむどんどん』は物語に必要な改変をしているというよりも、イタリア料理に忠実であろうとする姿勢が足りないのではないかと感じます」(同)
イタリア料理の正しい知識を日本に伝えるため、研究家として長年尽力してきただけに、長本氏にはドラマでの描かれ方には強い違和感があるようだ。
「簡単に言うと、イタリア料理というものは、フランス料理や日本料理のようにかっちりと形式が決まったものではありません。南は野菜を豊富に使った料理、北はチーズなど乳製品を使った料理、といった地域による特色だけでなく、紀元前8世紀からの古代ギリシャや古代ローマの食文化の影響を受け、独自の変化を遂げてきました。家庭料理の中で口承でレシピが伝わったという面もあり、その歴史を紐解いていくことにイタリア料理研究の面白い部分があります。そこを整理して正しい理解を広めたいという思いで、両国の料理人の橋渡しをしてきました」(同)
料理だけでなくシェフとしての暢子の姿に、視聴者も疑問を持つことがあるのではないだろうか。例えば、高嶋政伸(55)演じる二ツ橋光二シェフに教えられたことを「(料理は)見た目が大事」などとメモを取るシーンがある。
「教えられたことを真面目に取り組む姿を見せたいのかもしれませんが、厨房で堂々とメモを取るなんて、実際のレストランではまずやりません。どうしても必要な時は、隠れてサッと書くでしょうから、あんな風にしていたら先輩シェフから怒られるのではないでしょうか。それに、あまりに取るに足らない内容をメモしていますよね。あと、基本的に暢子は厨房の中でも髪を留めていないことが多く、コック帽からバサっと毛が出ています。衛生的にありえないです」(同)
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