70年代に“生魚のカルパッチョ”!? 朝ドラ「ちむどんどん」のイタリア料理にプロも困惑
「カルパッチョ」も無かったはず
時代設定に合わない料理は「ペペロンチーノ」だけではない。
1974年、「アッラ・フォンターナ」で働き始めて3年目の暢子は、前菜作りを任されるまでになった(第9週)。そこで、メニューにあった「寒ビラメのカルパッチョ」に自分なりの工夫をしようと醬油をきかせたソースを作るのだが、常連客からは「味が変わった」と不評。だが、問題はその味付けではない。
「『カルパッチョ』は、生魚の切り身にオリーブオイルやソースをかけた料理です。もともとイタリアでは生魚を食べる習慣はありませんから、オリジナルはピエモンテ 州の生肉のサラダを元にしてヴェネツィアで生まれたと言われています。それを魚介を使うメニューとして日本で作ったのが落合務シェフです。つまり日本で生まれた料理。日本で『カルパッチョ』が一般的になったのは、落合シェフがイタリア修行から戻って以降、早くとも1980年代になってから。魚介を使う『カルパッチョ』は、ドラマで描かれている時代にはまだ存在しなかったはずです」(同)
暢子はこの「カルパッチョ」を通じて、「イタリア料理の基本を尊重した上で工夫することの重要性」に気づくという、料理人としての成長に繋がる重要なストーリーだった。しかし、その時代にあるはずもない「カルパッチョ」で「イタリア料理の基本」を語るという、なんとも奇妙な事態となっていたのだ。
「ドラマの中で、細かな点をいちいち解説するわけにはいきませんでしょうから、ストーリー上、仕方がない修正や脚色があるだろうと思って、いちいち目くじらを立てずに見ていました。ただ、『ペペロンチーノ』や『カルパッチョ』に限らず、他の料理でも色々と間違いが多い。原田美枝子さん演じるオーナーが上質なイタリア語を話すのを聞いて感心しましたが、一方、イタリア料理に関しては、ドラマのせいで誤解が広まるのではと危惧しています」(同)
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