4630万円誤送金問題、田口被告が340万円返済で阿武町の被害額は0円 裁判にどう影響するか

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「全額の返済が完了した」――代理人弁護士の説明に違和感を覚えた人は、かなりの数に上るのではないか。時事通信は6月28日、「容疑者側が『全額返済』 町が未回収分を供託―山口・阿武町」の記事を配信した。

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 山口県阿武町が新型コロナ対策の給付金事業で4630万円を誤送金した問題では、無職の田口翔被告(24)が電子計算機使用詐欺罪で起訴されている。

 後で詳しく見るが、阿武町はこれまでに4290万円を回収。残りの340万円を回収できるかに注目が集まっていた。担当記者が言う。

「6月28日、田口被告の代理人弁護士が『340万円を法務局に供託した』と発表しました。その340万円は『東京のほうのホワイトナイト(白馬の騎士)』から借りたことも明らかにしたのです。ちなみに“ホワイトナイト”とは、普通、証券業界などで使われ、敵対的買収のターゲットとなった企業を守ってくれる友好的な企業のことを指します」

 代理人弁護士の“ホワイトナイト”という表現は、やや大げさではないだろうか。要するに、田口被告が借金をし、阿武町に340万円を返したということに過ぎないからだ。

「『あれ?』と違和感を持ったのは、この340万円の供託をもって、代理人弁護士が『全額の返済が完了した』と説明したからです。確かに、阿武町が誤送金した4630万円は全額が戻ってきました。しかし、その4630万円を田口被告が用立てたわけではないでしょう」(同・記者)

複雑な回収スキーム

 田口被告は4630万円の回収にどのような寄与を果たしたのか。まずはこれまでの複雑な経緯を振り返ってみよう。

 そもそも誤送金が起きたのは4月8日。田口被告は早くもこの日にデビット決済で67万8967円を出金した。

 11日には出金総額が900万円を突破。12日には1回あたり最高額の400万円を出金し、これが最初の逮捕容疑となった。

 結局、18日までに振込手数料も含め4633万1922円を出金。こうした金の流れが明らかになり、同日、山口県警は田口被告を逮捕した。

 一方、阿武町の代理人弁護士は、田口被告が税金を滞納していることに着目。13日に決算代行業者3社が口座を開設している銀行に対し、「国内で禁じられた賭博に関与した恐れがある」などの理由から情報開示を求めた。

 すると決算代行業者から阿武町に「金を返したい」と電話があり、3社の都内所在地が判明。19日に差し押さえと取り立て処分を実施した。3社の口座には合計で約600万円しか残っていなかったというが、翌20日に4300万円が阿武町の口座に振り込まれた。

 阿武町の代理人弁護士も「全額が返還されて驚いた」と発言したほど異例の展開だった。とはいえ、喜ぶのはまだ早い。この時点で4300万円は、大半が田口被告の“財産”だったのだ。

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