マスクを外さなければ「高齢者が千人単位で亡くなりかねない」 “濃い汗”をかく場合は要注意
熱中症による死者数
ただ、気を付けていても、熱中症になるときはあるかもしれない。肝要なのは初期症状を見落とさないことだろう。矢野医師が説く。
「めまいや立ちくらみのほか、炎天下にいて頭痛や動悸があったら、熱中症の初期症状かもしれません。足がつるのも脱水症状の可能性が高い。発見が遅れて重症化することも多く、こうした兆候が少しでも見えたら、早めに対応することです。首やわきの下に冷たいものを入れて体を冷やしたり、水分をしっかりとったりし、様子をみましょう」
さて話が戻るが、特に高齢者は、熱中症になりやすく、重症化しやすいことを、あらためて肝に銘じるべきだろう。田中教授が言う。
「熱中症で緊急搬送された場合の重症化率は、高齢者のほうが非常に高い。搬送される人の50~60%ほどが高齢者で、そのうち70~80%が重症化しています。コロナ対策も重要ですが、熱中症こそ命に直結する問題で、ましてこれだけ急激に気温が上がっているいまは、体がまだ暑さに慣れていないだけに、対策の優先度が高いと思います」
とにかく備えるしかない。熱中症による死者数は、近年では2010年が1731人と多く、18年の1581人が続く。特に10年は全国的に気温が平均を上回り、18年も同様の傾向にあった。今年はこの程度では済まないかもしれない。
政府は何をするべきか
それなのに、和田氏によれば、こんな問題がある。
「熱中症は治療が早ければ、多くの場合は点滴を打てば治まります。ところが、いまは多くの病院が発熱した人をすぐに受け入れず、PCR検査をしたりして治療が遅れます。コロナを指定感染症2類相当から5類に下げないと、救急対応ができません。政府は一刻も早くコロナの安全宣言を出し、5類に下げ、発熱者を特別扱いしないようにすることが大事だと思います」
しかし、現実には2類相当のままなので、一人ひとりが熱中症にならないように気を付けるしかない。また、矢野医師は、
「国民の半数がマスクをしなくなれば、脱マスクは一気に進むでしょうが、そうなるには、政府が“マスクを着けてはいけない”くらいの強いメッセージを出す必要があるでしょう」
と提言する。だが、政府はまだそう言わない。熱中症から自分をどう守るのか、炎天下のマスクや節電が自分や家族の命にどうかかわるのか、しっかり考えて行動するほかない。
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