マスクを外さなければ「高齢者が千人単位で亡くなりかねない」 “濃い汗”をかく場合は要注意
「高齢者が千人単位で亡くなりかねない」
「マスクの熱中症への影響について具体的なデータはありませんが、感覚的には30%程度、リスクが上がってしまうと思います」
とは日本体育協会公認スポーツドクター、塩野医院総合クリニックの塩野潔院長の指摘である。老年医学が専門で、『マスクを外す日のために』の著者でもある精神科医の和田秀樹氏も、
「コロナはオミクロン株になってから上気道炎止まり。命への影響では熱中症のほうが危険だと思います」
と言って、続ける。
「実はエアコンが普及する以前、多くの高齢者が夏に亡くなっていました。だから墓碑銘には7~8月が非常に多い。この10~20年ほど、高齢者がエアコンを使うようになり、夏場の死亡は減りましたが、もともと多かったのは、熱中症が高齢者にとって、コロナよりはるかに命に危険が及ぶ病気だからです。それなのにマスクをしていると、熱がこもって熱中症のリスクが上がってしまう。そのことは厚生労働省も認めていて、コロナがいまよりずっと怖い病気だった2020年の夏場でさえ、“外ではマスクを外してください”とアナウンスしていました」
そして警鐘を鳴らす。
「このままマスクを外さなければ、高齢者が千人単位で亡くなりかねません。そのうえ政府は節電を要請しているので、そのせいでさらに亡くなる。政府の言うことを聞いていたら、死ぬか要介護になるかのどちらかだ、と自覚したほうがいいと思います」
エアコンはつけっ放しに
事実、政府は節電を呼びかけている。電力会社の節電プログラムに参加すれば、2千円相当のポイントがもらえるとのことで、エアコンも切っておこうと考える人も多そうだが、矢野医師が警告する。
「特に高齢の方は夜になるとエアコンを切りがちですが、同じ夜でも20~30年前にくらべて気温が高い。それなのにエアコンを切って、熱中症になる高齢者が多いのです。熱中症で1人入院すれば、かさんだ電気代よりはるかに多くの医療費がかかります」
しかも、熱中症による死亡者の約半数は室内で発症している。秋津医院の秋津壽男院長(総合内科)も、
「エアコンさえついていれば、熱中症になることはほぼありません」
と言い切る。では、エアコンはどう使うのがいいのか。塩野院長が言う。
「つけっ放しを勧めます。これまで冷たい空気が逃げないように窓を閉め切ってエアコンをつけ、定期的に換気するのがいいとされていました。しかし最近では、窓を15センチくらい開けて風向きを下ではなく、水平にするのがいいとされています。風が下に向くと冷たい空気が下にたまってしまうので、横に向け、窓を開けて空気を循環させるのです」
温度設定はどうするか。
「昼間は暑さに合わせ、高くても24~25度くらいに設定し、夜は27度くらいでつけっ放しがいい。年を取ると暑さに対する感度が落ちますが、暑さを感じなくても冷房をつけることが重要です。昔の常識や感覚でエアコンの使用に罪悪感を持つのは大変危険で、夜でも冷房をつけないで寝ると熱中症になり、気付いたときには動けず、助けも呼べないということもあります」
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