ロシアが主導権を握りたいBRICSのアキレス腱 「良いとこ取り」で加盟ラッシュも
BRICS・新興5カ国首脳会議の今年の議長国である中国の招待を受け、6月24日のオンライン首脳会議に飛び入り参加したアルゼンチンのフェルナンデス大統領は「BRICSの正式なメンバーになることを強く希望する」と予想外の発言を行った。
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BRICSという名称はブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの国名の頭文字をとったものだ。米金融大手ゴールドマン・サックスのオニール氏が2001年、経済成長が著しい4カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国)を「BRICs」と命名すると、この名称は瞬く間に世界中に広まった。
世界的な関心の高まりを受けて、4カ国は2009年に首脳会議を始め、2010年に南アフリカが加わり、現在のBRICSメンバーは5カ国となっている。
BRICSはその後も経済成長を続け、現在の国内総生産(GDP)は世界の24%を占めるようになっている。人口に至っては世界の42%(30億人超)に達する。
アルゼンチンの正式加盟が認められれば、12年ぶりにBRICSのメンバーは増えることになる(BRICSという名称も変更される可能性が高い)が、BRICSは中国とともに、ウクライナ侵攻により西側諸国との対立が決定的になったロシアが大きな影響力を持つ組織だ。アルゼンチンはなぜこのタイミングで加盟の希望を表明したのだろうか。
インドの例に見る「対ロシア」の態度
ロシアがウクライナを侵攻して4ヶ月が経った現在、西側諸国がロシアに厳しい制裁を科しているものの、アジアや中南米、アフリカの大半の国はこれに同調していない。
このような現状にかんがみ、「世界の大半の国は、米国・欧州、中国・ロシアのいずれの陣営にも完全にくみしないことを望んでいるのではないか」との指摘が出ている(6月9日付日本経済新聞)。
自国の国益を第一に考え、ある問題では米国・欧州の立場に賛同し、別の問題では中国・ロシアに近い立場を取るという、外交のフリーハンドをこれまで以上に確保したいとする国々が増えているというわけだ。
この動きを最も顕著に示しているのはBRICSの一員であるインドだろう。
日本、米国、豪州とともに構成する4カ国の枠組み(クアッド)の一員であるインドは、「中国包囲網」の点では他の3カ国と歩調を合わせるが、それ以外の問題、対ロシアについては独自の立場を譲らない。兵器輸入の約5割をロシアに頼っているインドは、米国の懸念にもかかわらず、割安になったロシア産原油の「爆買い」を続けている。
ウクライナ危機がもたらした食料危機に苦しむアルゼンチンは、BRICSに正式加盟することで西側諸国と対立する意図はなく、インドのように西側諸国と中ロ両国の双方から「良いとこ取り」をしたいと考えているようにみえる。
今回のオンライン会議に参加しなかったものの、「サウジアラビアもBRICSへの加盟を前向きに検討している」との情報がある。
多くの国々が西側諸国と中ロ両国の両方から距離を取り、個々の問題ごとに「是々非々」で対処する傾向が出てきている。対外関係のフリーハンドを求める多くのアジア、アフリカ、中南米諸国が有力な選択肢判断するようになれば、今後BRICSへの加盟ラッシュが起きる可能性も排除できない。
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