「吐きそうなくらい気持ち悪い」 45歳男性が「女社長」との不倫を妻に罵られカチンときたワケ
芙美さんは60歳を超えた現在
紀代実さんは吐き気が止まらず、そのまま入院となった。翌日には帰宅できたが、そこから冷戦状態が始まった。
「すべて僕が悪い。離婚したいなら言ってほしい。そう言っても彼女は話合いに応じない。用があるときは子どもを通して言うかLINEで連絡が来ます。夫婦ってけっこうしゃべらなくても生活していけるものですね。寂しいですけどね。いつか爆発するんじゃないかと思っていたけど、妻はもうこの状態に慣れてしまったみたいで……」
そして敏紀さんは今も芙美さんと会っている。芙美さんは彼の変化に気づいて、何度も「バレたんじゃないの?」と聞いてくるが、彼は首を横に振る。芙美さんと別れる選択肢は彼にはないのだ。
「芙美さんは60歳を越えました。『私なんかと一緒にいるところを知り合いに見られたらどうするの』と言いますが、東京というところは意外と知り合いには会わないんですよね。居酒屋でふたりで飲んでいても、仕事仲間で通るし。ただ、彼女は60代には見えないと思いますが、年齢はどうでもいいので」
芙美さんの写真も見せてもらった。スレンダーな体型にショートヘアが似合う。鮮やかなブルーのシャツが上品で、笑顔が慈愛に満ちていた。彼の前だけで見せる顔なのではないだろうか。想像していたような「お母さん」タイプではなかったが、この女性に年齢関係なく「惚れ込んだ」のはわかるような気がした。
「妻と芙美さんは、僕の人生にかけがえのない2人の女性だと思うんです。だからどちらとも離れたくない。でも子どもたちも、もう両親がおかしいというのは気づいていますよね。子どもたちは僕とも妻ともちゃんと話してくれるけど、この先、問いただされたらどうしようとは思っています」
妻は淡々と仕事に行き、淡々と家事をこなしている。コロナ禍において、彼は出社が続き、妻は在宅ワークがメインになったため、顔をつきあわせなくてすんだのが唯一の救いだったと彼は言う。
妻が何か行動を起こすまでは彼は身動きがとれないという。だが、彼自身が言ったように、夫婦の会話がなくても日常は続いていく。これでいいとは思っていないが、こんなふうに固まってしまった現状を変えるのも怖い。彼は小声でそうつぶやいた。
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家庭が崩壊したいまも敏紀さんと芙美さんとの関係は続いている。気になるのは、妻にバレたことを芙美さんに伏せている点だ。明かすことでつながりが絶えてしまうのを恐れてのことだろうが、芙美さんに“隠し事”をするようになったことで、敏紀さんは「彼女の前でなら素直になれる自分」を失ってしまった。敏紀さんの「固まってしまった現状」は、いつかはどうにかしなければならなさそうだ。
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