「吐きそうなくらい気持ち悪い」 45歳男性が「女社長」との不倫を妻に罵られカチンときたワケ

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帰宅すると「仁王立ち」の妻が

 だが、彼にとって芙美さんは「あらゆる役割を果たしてくれる貴重な存在」だと思うようになっていった。惚れ込むというのは、そういうことなのかもしれない。

「そうですね。いろいろ理由をつけても、結局、僕は彼女が好きだった。それだけなんだと思う」

 彼も素直にそう納得した。それからは、月に1回程度、会う関係が続いた。彼はもっと会いたかったが、芙美さんは忙しく、なかなか時間をとってくれなかった。

「あるとき、もっと会いたいと言ったら、『私があなたに執着するようになったらどうするの? 家庭が崩壊するわよ』って。崩壊してもいいんだと言ったら怒られましたが。家に帰ったら、ちゃんと愛想よく家族と接するのよと言われていたし、そのつもりでいたけど、紀代実はもちろん芙美さんより若い分、貫禄がない。僕は紀代実の言うことを聞いている自分より、芙美さんに素直になっている自分が好きだったんだと思います。紀代実が相手だとどうしても僕は弟分になってしまう。でも芙美さんには息子として、あるいはしもべとして素直に仕えることができる。自分がそんな性格だったというのも意外でした」

 芙美さんの言うことを聞いて、密かに敏紀さんは愛情を捧げ続けた。家庭でも機嫌のいいお父さんの顔を貫いた。だが、それをおかしいと言い出したのは紀代実さんだ。

「僕らも3年ほど関係が続いて、少し気が緩んだんでしょうね。温泉地に1泊で旅行をしたんです。レンタカーを借りてこっそりと。妻には出張だと偽りました。その1ヶ月ほど前にも出張があったので、その仕事の続きだと言った。疑われてはいませんでした、その時点では。だけど帰りに事故渋滞に巻き込まれて、帰宅が午前2時ごろになってしまったんですよ。妻にはレンタカーで行くことも伝えていたのでごまかせると思った。でも帰宅したら妻が玄関で仁王立ちになっていたんです」

 妻がパラパラと紙をばらまいた。写真だった。前日、温泉地へ行ったふたりが写っている。敏紀さんが彼女の肩を抱くようにして旅館に入っていく様子も撮られていた。何も言えないまま妻を見上げると、妻は「動画もあるけど見る?」と言った。

 ため息をつきながらリビングに入っていった。渋滞に巻き込まれて心身ともに疲れていたと彼は言う。それでいて昨夜の芙美さんとの時間に浮かれているところもあった。

「紀代実は冷たい口調で、『この人、私の母と大差ない年齢よね。あのさ、ババアじゃん。どうしてこんなババアとつきあっているわけ? 吐きそうなくらい気持ちが悪いんだけど』と言ったんです。僕はそれを聞いてカチンときた。自分だって年をとるときは来る。怒っているのはわかるけど、年齢で人を差別するな、年が上だってやさしいんだよ、いい女なんだよ……。そう言いながら僕、ボロボロ泣いていたんですよ」

 紀代実さんは「信じられない。あんなばあさんと抱き合っているのを想像すると気が狂いそう」と叫んで、そのまま寝室に行ってしまった。妻の嗚咽を聞きながら、敏紀さんはソファに寝転んだ。気づいたら朝だった。

「その日は日曜だったので、シャワーを浴びて朝食を作り、子どもたちと話しながら食べましたが、紀代実は寝室から出てこない。子どもたちが呼びかけても返事もしない。僕が寝室に行くと、紀代実は『気持ちが悪い』と本当に吐いてしまった。あわててレンタカーで病院に連れていこうとしたら、そんな車に乗りたくないと、彼女はひとりでタクシーを拾って行きました」

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