「吐きそうなくらい気持ち悪い」 45歳男性が「女社長」との不倫を妻に罵られカチンときたワケ
押し倒して得た「とんでもない幸福感」
静かな薄暗いバーで、彼女はひとり飲んでいた。ドアを開けて彼女の姿を確認したとたん、「この人ともっと一緒にいたい」と彼の心の声が叫んだ。
一杯頼んだものの、敏紀さんの気持ちは落ち着かなかった。芙美さんが彼の手の甲に自分の手を重ねた。
「大丈夫、と彼女は言いました。僕の気持ちを飲み込んでいたんでしょう。さっとグラスを飲み干すと彼女は店を出て歩き始めました。自宅まで数分だったかな。足がもつれて転びそうでした」
オートロックマンションの扉を開け、エントランスを抜けてエレベーターに乗り込むと、彼女はいきなり彼の首に両手を巻きつけてきた。
「会いたかったと僕は言ったような気がします。彼女は『今日はずっと一緒だったでしょ』と微笑みました」
部屋に入ったが、彼はどんな部屋だったか見渡すこともしなかった。ソファを見つけたので彼女を押し倒した。そして「とんでもない幸福感」を得たという。
「僕は幸せだ、うれしいとずっと言っていた。でも彼女は黙っている。しばらくして、『若いあなたとこうなったことがいいかどうか私にはわからないけど』と彼女は言いました。そうじゃない、年齢なんて関係ない、あなたでなければだめなんだと僕は涙目になっていました。僕が僕であるために、僕が自分の存在を自分で確認するために、あなたに認めてもらうために。そんなようなことをずっと言っていたと思います」
彼女は黙って彼の背中を撫でてくれた。あなたの仕事や、精神的なことで私が必要ならいつでも利用してちょうだいと芙美さんは言った。利用なんてしたくない、一緒に歩いていきたいと懇願すると、芙美さんは「そんなことできるわけないでしょ」と一笑に付した。
「僕、離婚するからと言ったら、そんな無責任な男は嫌だと芙美さんが言うんです。家族を大事にしなさいって。しかも彼女、『私は最初の結婚からまだ自由になれていないの』と。夫が離婚を承諾してくれないので、戸籍はそのままにしているそうです。その後、彼女は事実婚をしたものの、その相手とも別れて、今はひとりだと」
最初の結婚でもうけたひとり娘は、すでに30歳を越えているとも話した。いろいろな経験を経て40歳のときにビジネスパートナーと起業。苦しい時期にパートナーに逃げられ、あとはひとりでがんばってきた。ようやく軌道に乗って、今は精鋭5人の社員とがんばっていると、やっと彼女の人生を聞くことができた。
「さ、帰りなさいって彼女に言われて。時計を見たら午前0時近かった。今日で人生が変わったと思うと言ったら、また微笑んでくれました。でも僕はなぜか彼女から離れたくなくて、グズグズしていたんです。そうしたら『夫として父親として、ちゃんとがんばりなさいね』と。なんだか急に母親に激励された子どもの気分になりました。やっぱり僕は母を求めていたのか、それは芙美さんにも失礼だとか、いろいろ考えましたね」
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