注射するだけで老化の進行を遅らせられる? 順天堂大チームが開発した「老化細胞除去ワクチン」

ドクター新潮 医療

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糖尿病患者の内臓脂肪に老化細胞が蓄積

 潮目が変わったのは2002年、ハーバード大学医学部留学から帰ってしばらく経った頃だった。ヒトの動脈硬化の病巣に老化細胞が蓄積していることを世界ではじめて証明し、医学誌「サーキュレーション」に発表したところ医学界で大きな注目を集めたのだ。

「これをきっかけに、動脈硬化と血管の老化の関係が重要であると認識する研究者が増えたと思います。その後、我々は糖尿病の患者さんの内臓脂肪に老化細胞が蓄積していることも証明した。その論文もよく引用されています」

 南野氏は血管の内側を裏打ちする血管内皮細胞の老化に関する研究を進め、13年頃、遺伝子データベースを活用し、ついにGPにたどり着いた。

「それから8年かけて、老化細胞除去ワクチンの研究成果を論文にまとめることができました。研究には長い時間がかかるんですよ」

始まった老化細胞除去薬探し

 日本発の老化細胞除去ワクチン。その効果はまだマウスで確認されただけである。が、「ヒトへの応用の第一歩です」と期待を寄せるのが、公益財団法人がん研究会がん研究所「細胞老化プロジェクト」プロジェクトリーダーの高橋暁子氏だ。

「15年から、老化細胞の除去を目的とする研究が爆発的に進んできました。この年、抗がん剤として使われているダサチニブと、植物に含まれる黄色い色素で、フラボノイドの一種のケルセチンを組みあわせてマウスに投与すると、老化細胞が除去されたという論文が出たのです。これを発表したのは米メイヨークリニックの研究者らで、彼らはこれら二つの薬剤の投与により、加齢に伴うさまざまな疾患の症状が緩和したとも報告し、世界に衝撃を与えました」

 こうして、新たな老化細胞除去薬探しが世界中で始まった。だが、候補薬のほとんどは既存の抗がん剤の中から見つかったものだという。

「南野先生らの、ワクチンによって老化細胞を除去するというアプローチは全く新しいものです」

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