部活動がなくなる?「教員の働き方改革」最優先で始まった、「部活の地域移行」への違和感

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「運動部活動の地域移行に関する検討会議提言」がまとめられ、6月6日、室伏広治スポーツ庁長官に手渡された。このニュースが報じられると、「学校の部活動がなくなるの?」「家庭の事情でスポーツができない子が出る?」といった不安の声が上がった。

移行は既定事実

 私は早速、会議に参加していた委員や、部活動を研究する大学教授、現場の指導者らに話を聞いた。会議に出席していた委員のひとりが話してくれた。

「参加者それぞれが、いろいろな立場を代表して選ばれていました。中学校や中体連、スポーツ少年団、総合型地域スポーツクラブ、日本スポーツ協会、競技団体、大学の研究者、地方自治体の担当者、PTAの代表もいました。会議が始まった当初は、みなさんが自分の立場で『現状では教員の仕事が過酷すぎる』『部活動はこうあるべきだ』『子どもにはこんな形でスポーツができる環境を提供したい』といった意見を熱心に話しておられました。でも、この有識者会議の目的に沿って、『部活動の地域移行を前提として、どんな対応が必要か、どんな課題があるのか』を話し合う方向に絞り込まれたように感じます」

 つまり、選ばれた委員たちも当初はそれぞれの立場で、学校を代表する委員は部活動の教育的意義や教員の実態を、教員を養成する立場の委員は教員の業務環境の厳しさを、スポーツ側の委員は部活のあり方や、スポーツのあり方を熱く語ったが、会議の目的はあくまで「地域移行」を既定事実として、おおまかな道筋を合意しながらデザインする会だった。

「今回の検討会議は、政府が進める『働き方改革』が中心にあって、教員の環境改善が一番の目的でした。私も当初は戸惑いましたが、働き方改革も、部活動改革も、持続可能なスポーツ環境整備も同等だと理解して、むしろ『この機を逃さず』一歩踏み出すべきだと考えを変えました」

ブラック部活

 子どもたちの立場で「部活動をどうするか」より、まずは教員の働き方改革、それが先にありきの会議だった。報道を受けて私が考えたのは真っ先に「子どもたちのスポーツ環境」だったが、この検討会議の主目的はまず「大人(教員)を救うこと」だったようだ。

「ブラック部活」という言葉が使われ始めた時も、同じ戸惑いがあった。受け取る側次第で、同じ言葉が別の現実を表すからだ。

「部活指導を担当させられるため教員はますます忙しく、過酷な勤務状況になる」、それを教員の立場から訴えた言葉が「ブラック部活」だ。一方、勝利至上主義に染まり、子どもたちを支配的、暴力的に指導する部活指導者たちがいる。それによって苦痛を受ける子どもたちの被害を訴える時も「ブラック部活」という表現が使われた。

 今回も「部活改革」というイメージから、子どもやスポーツを優先して考える人と、教員の立場を尊重して考える人で頭の中に展開する思いはまったく別だろう。

「休日の運動部活動から段階的に地域移行していく(目標は3年以内)」「平日の運動部活動はできるところから取り組む」「地域のスポーツ団体等と学校との連携・協働の推進」などを骨子とする今回の提言には、子どもやスポーツの立場で部活動を考える人にとっては違和感が拭えないだろう。この文言をそのまま理解すれば、「学校ではもう運動部活動をしない」とも読み取れるからだ。

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