「地球の歩き方」が明かす「ジョジョ本」誕生秘話 売り上げ9割減からの大逆転
飲食、劇場と、コロナ禍で打撃を受けた業種は数あるが、何といっても旅行関係だろう。観光客が減れば、ガイドブックも売れない。
【写真3枚】ネス湖やフリーメーソンを取り上げた『地球の歩き方 ムー 異世界の歩き方』
「コロナのせいで一時、売り上げは9割減でした」
と「地球の歩き方」編集長の宮田崇氏は語る。だが、1979年創刊以来の窮地の中で、ひとり気を吐いた企画がある。2020年9月発売の、初めて日本国内を扱った「東京編」がそれ。9万2千部を売り上げ、起死回生の話題作に。
今年に入っても「東京多摩地域編」「京都編」を刊行したが、目を向けるのはリアルな世界だけではない。目下好調なのが、2月に発売した『地球の歩き方 ムー 異世界の歩き方』だ。
「ムー」といえば学研が世に出した、UFOや超古代文明を扱うコアな月刊オカルト雑誌。「異世界の歩き方」はピラミッドほか古代文明やナスカの地上絵など、世界各地の謎と不思議に満ちた遺跡へ読者を誘う。
「“歩けない大陸”を取り上げてどうするんだって…」
刊行のきっかけは昨年、「歩き方」の発行元がダイヤモンド社から学研に移ったこと。「株式会社地球の歩き方」が設立され、ムー編集部のOBが社長に就いた。かくしてムー編集部との企画が持ち上がるが、
「最初はムーのテイストに飲み込まれてしまい、何をどう見せるかの組み立てが大変でした。当初、いきなりムー大陸の特集を構想したりして、おい、地球の歩き方が“歩けない大陸”を取り上げてどうするんだって……」(宮田氏)
苦心の目次はネス湖やストーンヘンジからフリーメイソン、日本の古墳にいたるまで、現実と異世界を絶妙に交ぜた巧いつくり。
ジョジョの世界を「歩かせることができるぞ」
これが幅広い年代に支持され、現在までに12万部。ところが、この売り上げを超えそうな本が7月に出る。『地球の歩き方 JOJO ジョジョの奇妙な冒険』だ。
ジョジョと聞いて分からない人もいようが、「奇妙な冒険」は世界累計1億2千万部を超える超人気コミック。主人公が北米、中米、アジア、ヨーロッパなど世界各地で冒険を繰り広げる。
「編集部に物すごくジョジョ好きな部員がいたんです。この作品は世界の国々が出てくるし、観光ポイントも丁寧に描いている。ならば“歩かせる”ことができるぞと企画が始まった」
ジョジョ発行元の集英社ともコラボが決まり、4月1日から予約受け付け開始。アマゾンの全書籍総合ランキングで1位に輝いた。
「総合ランクで東京編は3位、ムーも3位。『歩き方』で1位は初めてです」
売り上げ9割減からまさかのベストセラー連発。まさに禍を転じて福となす。
「いや、もがいた結果こうなったというか……。地球の歩き方なのに、編集部は走ってきた感じです」