中国で「特殊詐欺の架け子バイト」で逮捕された元日本人受刑者 地獄の刑務所生活を耐え抜き”奇跡の帰国”を果たすまで

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合流した日本人たち

 2018年秋に一審が開廷。弁護士とはこの段階で初めて会ったという。詐欺グループ内でも裁判は区分されており、Aさんは3人の日本人と5人の中国人と一緒に行われた。

 1カ月ほどして出た判決は、4年半の懲役刑だった。他の被告が1人でも上訴すると、全員が自動的に上訴する仕組みで一部の被告が上訴。翌19年7月に出た二審も同じ内容だった。中国は二審制なのでここで確定となる。そして、刑務所に移送されることになった。

 刑務所ではまず2カ月間、訓練棟に入所させられるが、そこでの生活が最もきつかったという。

「毎朝5時に叩き起こされて、中国国家を歌わさせられます。それから日が暮れるまで、点呼や行進の特訓、筋トレなども。私語は許されず、ちょっとでも怠けているような姿勢を見せれば、鉄拳が飛んできます。夜中でも1時間に1回、点呼が入るため、熟睡もできない」

 訓練所で初めて他の日本人たちと一緒になったという。

「ほとんどが初めて見る顔です。みんな相当やつれていて、おかしくなっている人も多かった。彼らとは最後の1年間、外国人専用刑務所に移送された時にも再会するのですが、いろいろな事情で集められていたことを知りました。借金のカタ で送り込まれたような人もいました」

人気メニューはかぼちゃの煮付け

 2カ月の訓練を終えると日本人はバラされ、中国人と同じ大部屋に移されて本格的な懲役を受けることになる。Aさんが担当したのは靴工場だった。

「拘置所でも折り紙を折る労働が数時間あったのですが、刑務所では朝6時から夕方までみっちり働かされる。比較にならないくらいきつかった。楽しみといったら寝ることくらいです。寝ている間は刑期が減るでしょう。だからみんな『よーし、これから減刑だ』って言ってから布団に入る。拘置所と一緒で冷暖房などないので、冬は死ぬほど寒い。唯一まともになったのは食事です。菜っ葉だけではなく、ちゃんとしたおかずや汁物が出るようになった。『今日はナスだ!』って感じですよ。かぼちゃの煮付けが人気でしたね。粉ミルクと混ぜるとクリーミーな味になるんです。ちなみに、刑務所でも『我爱你中国』という愛国歌を毎日歌わされました」

 すでに拘置所内で2年2カ月を過ごしていたので、残りの刑期は2年3カ月だ。真面目に務めれば、刑期が最大半年、短縮されるとあって、Aさんはそれを目標に頑張ったという。だが、結局、コロナ禍の影響などもあり、刑期は1カ月しか短縮されなかった。

 そして、とうとう待ちに待った瞬間が訪れた。2021年某日。夕方、看守から「今日で釈放だ」と言い渡された。その日のうちに釈放され、飛行機に搭乗するまでの2日間、警察官とホテルに宿泊した。

「ようやくふかふかの布団で横になれると思いきや、ベッドは警官が占拠し、僕は狭いソファーベッドで体を曲げて寝なければならなかった。それでも、いよいよ帰国できるとなった時の開放感といったらならかったですね。警官からは『もう中国には来るな。お前らはここでは嫌われているから』って言われました」

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