食事療法と少量の抗がん剤を使用「がん共存療法」とは 『病院で死ぬということ』著者が自ら実践

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この世での役割を終えるまで

 現代がん医療の課題に気付いてしまった以上、そして、それを改善できるかもしれない方法があるのに、批判や非難を恐れて、それに取り組みもせず、見て見ぬふりをすることは私にはできない。幸い今は共存できている私のがんも、いずれは進行し、私は死に向かうだろう。

 だからその前に、私は、がん医療の課題の改善の、その一つになり得る「がん共存療法」の確立に、全力を尽くしたい。今は、そう生きることが、医者としての大半を緩和ケア医として生きてきた、私の人生の締めくくりなのだと確信している。そして、いつか懐かしき人々に相まみえる日を夢見て、この世での役割を終えるまで、前に向かって歩み続けたいと思う。以上が、ステージ4の大腸がんになった私がたどり着いた答えである。

山崎章郎(やまざきふみお)
医師。1947年、福島県生まれ。千葉大学医学部を卒業し、同大学附属病院などに勤務。90年『病院で死ぬということ』(日本エッセイスト・クラブ賞受賞)がベストセラーになった。その後は緩和ケアに取り組み、在宅療養支援診療所ケアタウン小平クリニックを開設。訪問診療に従事している。他の著書に『「在宅ホスピス」という仕組み』(新潮選書)など。

週刊新潮 2022年6月30日号掲載

特別読物「『病院で死ぬとういこと』から30年 ステージ4の『緩和ケア医』が辿り着いた『がん治療』の答え」より

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