食事療法と少量の抗がん剤を使用「がん共存療法」とは 『病院で死ぬということ』著者が自ら実践

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公的医療保険の不条理

 ところで、ステージ4の固形がんに対する標準治療は、基本的に抗がん剤治療であり、標準治療とは公的医療保険が適用される治療という意味でもある。

 すなわち、公的医療保険の範囲内でステージ4の固形がんの治療を受けようとする場合には、抗がん剤治療が基本になるということだ。

 ゆえに抗がん剤治療を選択しない患者さんは、公的医療保険の対象にはならず、通院そのものを断られてしまうことも少なくない。

 ステージ4の固形がんというスタートも同じ、その経過に個人差はあるにしても、いずれ死に直面する可能性が高いというゴールも同じ、そして同じ加入者であるにもかかわらず、抗がん剤治療を選択した患者さんには、手厚い公的医療保険の支援があるのに、抗がん剤治療を選択しない患者さんは、公的医療保険に基づいた経過観察の通院すら断られてしまう場合もあるという現状は、不条理でしかないだろう。

なぜ「がん難民」が生まれるのか

 しかし、当然のことながら「抗がん剤治療を選択したくない」=「早く死にたい」わけではない。そこで、「抗がん剤治療は選択したくない」患者さんたちの中には、公的医療保険が適用されない、患者さんの足元を見るような怪しげな代替療法や民間療法、驚くほど高額な免疫療法などを自費で受ける人々も出てくることになる。このように「抗がん剤治療の現実」と「公的医療保険の不条理」の前で、翻弄されて拠り所を求める人々は「がん難民」ともいわれるのだ。

 繰り返すが、我が国のがん医療が示すエビデンスでは、標準治療としての抗がん剤治療でもステージ4の固形がんを治すことは難しい。結果として、その標準治療や公的医療保険の実状が、「がん難民」を生み出しているのである。

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