食事療法と少量の抗がん剤を使用「がん共存療法」とは 『病院で死ぬということ』著者が自ら実践

ドクター新潮 医療 がん

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目的は「延命」「症状緩和」

 国立がん研究センターのホームページにある「がん情報サービス」には、ステージ4の固形がんに対する標準治療としての抗がん剤治療の意義が詳述されている。

 それによれば、ステージ4の固形がんを抗がん剤で「治癒」させることは難しく、抗がん剤治療の目的は「延命」や「症状緩和」であるということや、抗がん剤治療をしなかった場合に比べて、抗がん剤に効果があった場合には、「数カ月から数年の延命が期待できる」と解説されている。当然効果がない場合もあり、期待された延命どころか、副作用で縮命することもある。

 同ホームページには、抗がん剤による副作用対策も種々取られていると説明されているが、私が付き添わせていただいた多くのがん患者さんの、抗がん剤治療の経過からわかることは、私が体験したような過酷な副作用を体験する人は、けっして稀ではないということである。

 もちろん、副作用も少なく、順調に抗がん剤治療を受けて、延命された時間を充実して過ごすことのできる患者さんたちも少なくないだろう。

抗がん剤治療に意義を見出せない場合も

 だが、治癒を前提にすることは難しく、そう遠からず死に直面する可能性の高いステージ4の固形がん患者さんにとって、前述したような課題の多い抗がん剤治療の意義とはなんだろう。

 それは、治療を選ばなかった場合よりも延びる可能性のある、数カ月から数年の人生を、どう生きるのか、どう生きたいのかによっても違ってくるのではないだろうか。

 幸い、抗がん剤に効果があり、副作用も少なければ、延命された時間を自分らしく生きることも可能だろう。また、たとえ苦しくとも、一分でも一秒でも長くこの世にいたいと願う患者さんにとっても大きな拠り所になるだろう。

 だが、私も含めた、過酷な副作用を体験した人々にとっては、数カ月から数年の延命との引き換えに、更なる副作用に耐えなければならない可能性のある、再度の抗がん剤治療に意義を見出すことは難しい場合もあるだろう。

 上記のような、抗がん剤治療の現状を考えると、私は、ステージ4に対する標準治療としての抗がん剤治療を受ける気持ちにはなれなかった。

 1カ月後の外来で、主治医に、抗がん剤治療は受けたくない想いを伝えた。心優しき主治医は、「もし、抗がん剤治療をご希望される場合には、いつでもどうぞ」と私の想いを受け止めてくれた。そして、治療を断ったにもかかわらず、主治医は3カ月に1回ほどの経過観察のためのCT検査の願いも聞き入れてくれたのだ。うれしかった。

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