大崎事件は95歳で「再審請求棄却」 立ちはだかる検察の「抗告」という壁【袴田事件と世界一の姉】

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なぜ、再審に時間がかかるのか

 袴田事件にしろ大崎事件にしろ、なぜ無実を訴える人がここまで高齢になっても濡れ衣を晴らすことができないのか。その理由は、裁判所の再審開始決定に対して検察が何回でも抗告できるからである。これにより、再審ではなく再審を認めるかどうかの「再審請求審」という入り口の段階で、長い年月が奪われてしまう。

 抗告が認められなかった場合、袴田事件なら2014年、大崎事件なら2002年には再審が開始されていたはずだ。この司法を改革すべき先頭に立つ人物こそが、現在、日本弁護士連合会の「再審法改正に関する特別部会」の部長を務める鴨志田弁護士である。

「日本が司法制度の手本としたドイツをはじめ、海外では再審開始決定への検察の抗告は禁止されている。戦後、刑事訴訟法などが改正されたが、再審に関しては一部を除き戦前のまま。ガラパゴス状態なのです。欧米に遅れているだけではありません。日本の司法制度を取り入れた台湾や韓国にも遅れている」として、再審請求段階での証拠開示手続きの整備や検察の抗告を禁じるなどした再審法の成立を目指す。

「清水・静岡市民の会」の山崎事務局長は、鹿児島地裁の棄却について「詳細に検討したわけではない」との前提で、「裁判官は、死体を扱う法医学者の意見を重要視したということではないかと感じた。検察側の法医学者の意見がどのような内容だったのか、私にはわかりませんが、救命医の死を目前にした生体を治療する側の意見より、死体しか見ない法医学者の意見を採用した、ということでしょうか。残念でなりません」と話していた。

粟野仁雄(あわの・まさお)
ジャーナリスト。1956年、兵庫県生まれ。大阪大学文学部を卒業。2001年まで共同通信記者。著書に「サハリンに残されて」(三一書房)、「警察の犯罪――鹿児島県警・志布志事件」(ワック)、「検察に、殺される」(ベスト新書)、「ルポ 原発難民」(潮出版社)、「アスベスト禍」(集英社新書)など。

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