なぜ「IPPON女子グランプリ」でタレント勢が強かったのか 女性芸人を萎縮させた「番組の構造」

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敗因は空気の読みすぎ? プレッシャーを生んだ通常版「IPPONグランプリ」との違い

 タレント回を見て改めて感じたが、大喜利は回答そのものより、その場の空気や流れをいかに作るかが大きい。声の大きさやタメの作り方、フリップ芸にリアクション。はるかさんは突出してうまかったし、渋谷さんや滝沢カレンさんもお見事だった。共通しているのは、空気は読まないという姿勢ではないだろうか。

 空気は作るもので、読んだら負け。結果的にタレント枠が爽快だったのは、天然ボケキャラばかりの爆発力というより、みな変な計算や遠慮をせずひたすら勝ちに行くまっすぐさを持った人たちだったからだろう。

 でも今回は、芸人チームは空気を読みすぎて足踏みした印象がある。特に通常版と違うシステムが、その傾向を加速させていたように思う。

 一つは採点システムだ。通常版では2チームに分かれ、出場していない側のメンバーが点を入れる。しかし今回はチェアマンの松ちゃんを含め、バカリズムさん、麒麟・川島明さん、千鳥・大悟さんという過去の優勝者による評点だ。お笑い強者の大先輩たちによる評価は、単なる大喜利の点数というより芸人としての点数をつけられるような怖さもあったのではないか。採点基準も明確でないため、男性受けする回答を手探りしている場面も見受けられた。

 印象的だったのがイワクラさんと福田さんだ。「おっさんと体が入れ替わった時に相手に伝えておく注意事項は?」のお題に「デスクの上に推しのアクスタおくけど、いける?」と回答して点を逃したイワクラさん。「推し」「アクスタ」など若者ワードはイマイチと見たのか、次のお題では「キン肉マン」「痛風」といったオジサン好みのワードを散りばめ猛追。自分のキャラをうまく使い「男ふるわすブラくれや」などのヒットを繰り出し波に乗った。逆に福田さんは男性審査員ということを意識しすぎたか、下ネタよりの回答を連発し停滞。ただ加納さんも試行錯誤の末に風俗ネタで点を取っただけに、互いの出し手と反応の差に混乱している空気もうかがえた。

 タレント回と芸人回という区分けも、通常版と違うシステムだ。本職ならではの盛り上がりを見せなくては、というプレッシャーもあったことだろう。加納さんの硬い表情には、職人気質や気負い、不安もにじみ出ていた。彼女と仲良しの福田さんはプロデューサー視点というか俯瞰目線が強い人だが、勝負より番組のバランスを取ることを捨てきれなかったのではないか。女王の風格を見せるはるかさん、自分の笑いを試し続ける加納さん、コツを掴み加速するイワクラさん。ならば自分は空回りするポジションだと。そして加納さんとは、プロレストークで見せ場も作る。そんな計算も感じ取れたが、通常版の男性芸人たちによるスピード感にあふれる大喜利や、悪ノリに次ぐ悪ノリを期待していた視聴者にとってはお行儀が良すぎるように見えたかもしれない。

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